kick starter、嫌子、好子

猿並日記さんから反応いただきました。生意気で青臭い意見に真面目な意見を誠にありがとうございます。前回書いたことは実に単純化した提案であって、物事そんな簡単なものではないことはワタクシもわかっております。それを承知のうえで、引きつづき勝手な意見を書かせていただきたいと思います。あと、これらの持論はAランクBランクの大学に向けたものではないことを念には念を入れて繰り返し強調させていただきたいと思います。

まず、猿並日記さんの第一の懸念「やる前からあきらめてしまってやろうとしない」学生に対して、「最初の一発、どうやって努力してもらうか。そして努力が実を結ぶということをどうやって分かってもらうか」という問題ですが、猿並日記さんがちょっとおっしゃってますが、そう、毎回小テストをやるのです。しかし、学生はテストが嫌いです。日本の学生は高校教育のせいで(その元凶は大学入試ですが)、テストとなると学生は「減点されないようにしなきゃ」という保身モードに入ってしまいます。

だから、テスト形式よりも、problemを与えて、solutionを考えてもらい記述してもらう、そういった、より緩やかな形式が良いと思われます。しかも、隣り前後の友達とディスカッションしながらやってもらって良いという形式にすれば、「減点されないようにしなきゃ」という後向きな姿勢がなくなるから良いと思いますね。どうせ採点する時間もこちらにはないですから、「回収はするけれども採点はしない」と宣言しておけば絶対テストにならない。もちろん「白紙ではだめ」と釘を差す必要があります。また、時間があれば出来が良いものをピックアップして、次の授業で実名とともに紹介するのも効果的だと思います。学生は、自分が模範解答を書けるわけないと鼻から思ってますが、身近な知り合いの答案が模範解答としてとりあげられたりすると刺激を受けたりします。

こういうことをやると、講義の時間が短かくなってしまうのですが、どうせ学生の集中力は90分フルでは持たないのでかまわないんじゃないかとぼくは思っています。ちなみに教えるぼくも90分持たないです、集中力。

第二の懸念ポイント、「これは成果主義に基づく嫌子(negative reinforcer)提示型というか、脅迫型というか、「やらないとひどい目にあうからやる」と言ってやらせる型」であるという問題点。

まず第一に指摘したいのは、Cランク以下の大学の学生というのはもともと「単位を落としたくないから」という嫌子駆動型(←用語の用法がめちゃめちゃかも)の姿勢で授業に臨む人が少なくないということです。つまり、「嫌子のないところに嫌子を導入する」わけではないので、それほど被害は大きくないはず。

第二に、positive reinforcerと常にセットにするように気をつければ大丈夫かと思います。好子はこの場合、毎回のproblem setです。解けなくてもペナルティーがない、「一見難しそうだけど、その日の授業を聴いていれば絶対に解ける問題」を解かせることがそれに当たります。また、ぼくは授業の最初に、「履修者の半分が優をとれるように授業をデザインする」と宣言しています。実際、ぼくが担当した大人数クラスの前期試験の平均点は80点代後半であり、90点以上も半分近く出ました(後期はもうちょっと難しくしないといけないなと思ってますが)。なんだかんだ言っても学生は良い点が返ってくると喜びます。

関連することで、嫌子提示型は「本当の(?)意欲にはつながらない」という問題があるということですが、ぼくは「本当の(?)意欲」をもってもらうということにはまったく興味ありません。大学生活、授業よりもおもしろいことがあるのは当然じゃないですか! 学者になるわけでもないし、学問に意欲をもってくれなくてもいい。授業内の責任を果たして、かつ授業というゲームを楽しんでくれればいい。

もう一つ、「嫌子提示がなくなったら、つまり脅迫がなくなったら、つまり単位が取れたら、その瞬間に勉強することをやめてしまう」‥わはは、心配しなくても、学生はデフォルトで「単位が取れたら、その瞬間に勉強することをやめてしまう」ものですよ(ぼくがまさにそうでしたし)。我々に失なうものはもともとないんです。

え? 教員としての志が低い? ま、そうかもしれませんね。

なお、散々えらそうなことを書きましたが、今まで主張したことが普遍的に効果があることなのか、まったく何の保証もありません。この方法論をインストールしたことにより被った被害については一切責任を負いかねますのでその点どうか御了承ください。