最も危険な遊戯 (1978) ★★★

director: 村川透
screenwriter: 永原秀一

松田優作の代表作の一つ。まず、冒頭の麻雀のシーンの濃さがすごい。役者の濃さが。松田、石橋蓮司、榎木兵衛、この三人だけでむせるような濃さ。ついでに柴田恭兵(←最初わからなかった)に、台詞なくてクレジットもないけど内田裕也。もう、こんな濃い雀荘に居たらそれだけで卒倒しそうです。

というわけで、役者の存在感の固まりのようなオープニングから始まるこの映画、実は、最後の最後まで役者の存在感だけで持っている。雀荘のシーンはストーリーには関係ないので、石橋も榎木もこのあと出てこないのが残念。よって、冒頭の雀荘のシーンが濃さのピークで、あとは松田優作頼み。松田はやっぱりおもしろくて、演技がヘタうまいとか以前にわけのわからない存在感に満ちています。

それはいいんだけど、他の要素がなあ‥。低予算だったそうだけど、確かにいろんなところが低予算な感じ。これってテレビ番組?って何回も確認しちゃったよ。ピストルの音が「バキューン」なのは時代だからしょうがないにしても、ピストルから派手に火花が飛びちるのはいかがなものか。パンチするといちいちテレビゲームのような音が出るのってどうよ。「時代が古いから‥」ってのは言い訳にならんと思う。「ダーティーハリー」の7年後だぞ。それから、台詞がアフレコなんだけどそれがアフレコ丸出しすぎて興覚め。そして何より、ストーリーが滅茶苦茶すぎ。

あとさあ、クライマックスのカーチェースならぬ、人間vs.車チェースは、あれって笑うところ? リアクションに困ったぞ。人間が車を追いかけて引き離されないということは、人間の脚が常識はずれに速いか車が常識はずれに遅いかのどっちかでしょ。あのシーン、車が遅いんだか人間が速いんだかわからない。どっちにしても非現実的なんだから、松田優作が「ぬおおおおっ!!」とか気合い入れて車に追いついてしまうぐらいの馬鹿馬鹿しさが欲しかった。いや、ほんと、この映画、松田以外に突き抜けた要素がもっとあれば豪快なトンデモ作品として伝説になったと思うんだけどなあ。あと、もっとバイオレンスがあればよかったなあ。エロはたくさんあるので、そこは合格。すごい男尊女卑だけど。

90分だし、松田優作だけで最後までなんとなく一気に観させられる感じ。あと、エレクトリック・マイルズな音楽がなかなか凝っていました。なんかもったいない感じの映画だなあ‥。