iTunesはiPod Shuffleの窓

話題のiPod shuffleですが、液晶ディスプレイがないことを疑問視する意見が見受けられます。これはまあ、当然というか、「液晶ディスプレイがあったほうがイイ!」と考える人がいてもまったく不思議ではありません。また、Channelnewsasia.comの報道によれば、CreativeのCEO(ところでCreativeってシンガポールの会社だったんだ。知らんかった)は「液晶ディスプレイもFM機能もついていないiPod shuffleは、我が社の4世代前の初代NOMAD MuVoレベルの製品で、中国製の安物フラッシュプレイヤーより劣っている。まったく勝負にならない」とこきおろしています。

しかしそれでもおそらくiPod shuffleは大成功するでしょう。なぜ液晶もついていないiPod shuffleが成功を約束されているのか? 「iPodのブランド力があるから」「安いから(液晶がない分、競合フラッシュ音楽プレーヤーよりかなり安い)」「デザインがシンプルで良いから」‥さまざまな理由があげられるでしょう。しかし、本当の理由はiTunesの存在でしょう。

CreativeのCEOは、iPod shuffleの機能不足を批判していますが、実はiPod shuffleは、その多くの機能と楽しみ方の可能性をiTunesにゆだねているのです。だから、iPod shuffle単体で見るだけではiPod shuffleがなぜ発表と同時でここまでセンセーショナルな話題になったのかはまったく理解できないはずです。

普通の考えでは、携帯音楽プレーヤーを聴くとき、聴き手が曲をコントロールする、よって、携帯音楽プレイヤー自体が聴き手の選曲の欲求にこたえる必要があるということになります。それゆえ、フラッシュメモリ音楽プレイヤーでも液晶ディスプレイがあったほうが良いということになります。しかし、iPod shuffleはそういう思想ではないんですね。「聴き手の選曲」というのは、フラッシュメモリに音楽を転送する前の段階、つまり、iTunes上でプレイリストを作る段階ですでに終わっている、それがiPod shuffleの思想なんですね。だから、iPod shuffleが必要最小限の選曲コントロール機能しかなくても問題ないということになる。

言いかえれば、iTunesiPod shuffleの「窓」であり、「液晶画面」の代わりなんですよね。iPod shuffleiTunesは一体である、もっといえば、iTunesiPod shuffleの機能の一部であるわけです。つまり、シンプルすぎる機能に見えるが、その背後にはiTunesという強力な操作インタフェースが存在しているわけです。分離して考えてしまうとなぜiPod shuffleがこれだけ話題になっているのか見えなくなってしまうんですよね。同時に、「iPod shuffleは機能を削っているのが魅力」という分析も、言葉たらずだと言えます。機能を削っているから魅力なのではない。低機能なだけならCreative NOMAD MuVoの第一世代だってそうだった。そうじゃなくて、iTunesと携帯プレイヤーの関係性に新たな光を投げかけているから魅力なんですよね。

このあたり、陳腐な言い回しですが、凡人にはなかなか思いもよらないコロンブスの卵的な発想であり、いやほんと、こりゃすごいなあと感心するばかりの今日このごろであります。あと、iPod shuffleiPodiPod miniの成功でiTunesが認知されたからこそ話題になっているんだなということもわかりますね。iTunesを使ったことのない人にはiPod shuffleの何が良いのかあまりわからないかもしれません。

以上、くどくどと駄文をならべてしまいました。