悪名 (1961) ★★★★

director: 田中徳三
screenwriter: 依田義賢

日本映画の勉強の時間です。勝新映画をちゃんと観るのはこれが初。チンピラ映画ですが、設定が昭和初期なんで、のちのヤクザ映画のような血なまぐささがないのがほほえましくも新鮮。ヤクザに良いもなにもないけど、「古き良き時代」なんて言葉がよぎりました。基本は「殺し合い」じゃなくて「どつき合い」。いや、正確には「とっくみ合い」か。土と埃にまみれたケンカがすがすがしい。

で、ストーリーは、なんというか、本宮ひろ志的というか、いや、逆か。本宮がこのあたりの影響を受けているのか。男前で血の気が多くて曲ったことが大嫌いで、徒党を組むのも嫌い、頭も切れるがおひとよし、男も女も惚れる蛮カラ男(勝新)が主人公。ハマり役。さすがにオーラがあります。しかし、勝新以上にオレ的にインパクトがあったのが弟分役の田宮二郎。オレの世代だと田宮二郎といえば「白い巨塔」なわけで、そこでの「冷徹なインテリ」とは一万光年離れた本作のマッチョな役にびっくり。しょっぱなの登場シーンから、日本人離れした体格とルックスでド迫力の存在感。すごいね。しかもそのあとすぐ「あにきぃ〜」と、三枚目な弟キャラになるあたりも芸達者。

勝新田宮二郎という二大巨頭の他、不思議ちゃんな雰囲気のギャル・中村玉緒、恐すぎる女親分・浪花千栄子など、いずれもキャラがすばらしく立っていて、観てて飽きない。キャラが立ってて演出が見事で役者も最高だと、少々ストーリーが強引でツッコミどころ満載でも気になりませんね。おもしろかったです。タイトルから想像されるようなおどろおどろしい世界ではなかったし。個人的には、最初に勝新をたぶらかすお千代(中田康子)の天性のコケティッシュさに負けますた。