アカデミー賞

今年のアカデミー賞。スコセッシの「The Aviator」が有力候補だったんですが、直前になってイーストウッドの「Million Dollar Baby」が主要賞をすくいとってしまいましたね。日本に帰ってきた身として、アカデミー賞ねらいの作品を発表の前に観られないことが多いのは残念なのですが、未観賞ではあるものの、イーストウッド・ファンのオレなので、「Million Dollar Baby」に頑張ってほしいと思っていました。結果的に予想以上に健闘(作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞)、うれしい限りです。もうすぐアメリカに遊びにいくので、「Million Dollar Baby」、観てくるつもりですが、でも別にアカデミーがどうのこうのというミーハー心で観にいくわけじゃないですからね! ‥と主張しても誰も信じてくれなさそうですね。まあ、イーストウッドの新作だからというミーハー心で観るのだから、似たようなものかもしれませんが。ちなみに前作「ミスティック・リヴァー」はあんまり好きじゃなかったんだよね。今回はイーストウッドが銀幕に復帰しているし、スポ根ものらしいし、たのしみ。

一方、スコセッシの「The Aviator」はちょっとかわいそうだったね。一応5部門で受賞したものの、内容は撮影、編集、助演女優、衣裳、美術と、ちょっと地味。デカプリのスターパワーでは、イーストウッド&ヒラリー・スワンク&モーガン・フリーマンインパクトには勝てなかったか。でもこちらも時間があったら観てきたいと思ってます。

他、ちょっとうれしかったのがジェイミー・フォックスの大金星(主演男優賞)。フォックスは、キーナン・アイヴォリー・ウェイアンズ(←多彩な人だが、一番有名なのは「スケアリー・ムービー」の監督)による黒人お笑いテレビ番組「In Living Color」のキャストの一人としてキャリアをスタートさせ、その後、ホテルを舞台にしたsitcomの「Jamie Foxx Show」などでお茶の間コメディアンとしてはアメリカではずっと有名だったんだけど、映画での出演作は少なく、国際的には比較的無名でありました。もちろん彼に映画のオファーがあまりなかったとは思えません。日本では全部は公開されないものの、アメリカでは黒人コメディー映画の需要というのは非常に大きいんですよね。ただ、安易な作品が多いのも事実で、ジェイミー・フォックスはそのあたりを慎重に避けていたのかもしれません。

とはいえ、先に挙げた「In Living Color」の「同僚」であり、唯一の白人キャストだったジム・キャリーがその後映画で確固たるスターダムを築きあげたのと比較すると、フォックスのlow profileぶりにはちょっとはがゆい思いも感じていました。いや、ジム・キャリーと比較しなくても、同じ黒人コメディアン出身でも、たとえば同じぐらいの世代のマーティン・ローレンス(「ブルー・ストリーク」)や、ずっと若いクリス・タッカーが映画でヒット作を出しているのに、頭が良くて芸も達者なジェイミー・フォックスがなんでこんなに国際的に無名なんだ!と思っていたわけですよ。しかもこのヒトは音楽的才能もあって、キーボードも弾けるし歌もうまい。それなのにあんまり音楽活動もやらない(しかし、去年ラッパーのTwistaの「Slow Jamz」という曲にボーカリストとして参加し、全米ナンバー1になりましたが)。このマイペースぶりはなんなんだと。

しかし、それも、「くだらない映画に出て露出を増やしても自分の価値が下がるだけだ」というフォックスの戦略だったのかもしれません。「我慢」の甲斐あってか、ついに去年「コラテラル」と「Ray/レイ」でブレイクしたという感じでしょうか。まさかオスカーまでとれるとは思ってませんでしたが、これで映画のオファーが殺到するでしょう。遅咲きの俳優としてこれからの活躍を期待したいところです。とはいえ、オレは「コラテラル」も「Ray」もまだ観てませんが。い、いや、観ますよ、そのうち!