捜索者 (1956) ★★★

The Searchers
director: John Ford
screenwriter: Winton Hoch


捜索者 [DVD] この映画、まだ観てないと思って借りたんですが、以前観たわ‥。でもあらためて感想書きます。ところで、http://www.allmovie.comでも五つ★満点が付いている古典であることをお断わりしておきたいと思います。オレの★★★という星取りはあくまでオレの好み度ということで。

ジョン・ウェイン主演、ジョン・フォード監督というウェスタンの黄金コンビの作品ですが、いつもの「勧善懲悪」的なヒーロー像ではなく、antihero(アンチヒーロー、アメリカ英語風に発音すればアンタイヒーロー)を描いた作品として金字塔となった作品なんですね。「antihero」とは何かというと、心に闇の部分を持っていて、その行動も規範を少しはずれているヒーローのことです。最初期のantihero映画として、後のマカロニウェスタン (Spaghetti Western)、Revisionist Westernや黒澤映画だけでなく、70年代アメリカン・ニューシネマにも影響を与えた‥ということです。スコセッシの「タクシードライバー」との関連が言われているようですが、ええっ?そうなの? 「タクシードライバー」も見直さないと。

で、この映画の主役のジョン・ウェインは、誰にも心を開かない男で、インディアン(の特定の部族?)に対して異常な憎悪と執念深さを持っている。それは、人種的な憎悪というよりもどうやら個人的な怨恨らしいのだけれども、そのあたりは映画でははっきりとは語られない。あるとき、白人の村が「スカー」という男が率いるインディアンの一族に襲撃され、幼い少女が誘拐される。それを追って、ジョン・ウェイン演じるイーサンと、白人の村でみなしごとして育てられた混血のマーティンとの二人の執念の捜索が始まる‥というストーリー。

白人=善、インディアン=悪という典型的ウェスタンの構図ではなく、混血の問題や個人的な憎しみとしての対立を描くなど、よりリアルな白人対ネイティブアメリカンの間の交流と軋轢を描いた映画として画期的だったのだと思います。ウェイン演じるイーサンの「過去」は映画では語られませんが、状況から推測すると、イーサンはインディアンとの深い交流(恋愛もあったのかもしれない)が過去にあって、それがある時点で破壊され、憎悪を抱くようになたというような過去があるように感じられます。

ただ、1950年代という時代的な背景もあってか、そのあたりがかなりぼかされているのが残念。歴史的な観点からすると画期的なんだと思うけれども、現代的な観点からするとちょっともどかしさを感じる。終盤でイーサンはある狂気じみた行動をとりますが、ここも時代を考えると非常に画期的だと思うと同時に、時代のせいで「ぬるい」映像表現になっていて、ちょっとはがゆい。

全体に、従来のオーソドックスなウェスタンの表現形式と、新しい、よりダークな題材の中間をとったような映画になっていて、しかもその両者の要素が解離している部分があって、2000年代に生きるオレ的にはちょっと物足りなさを感じてしまいました。ハイ。