間違えられた男 (1956) ★★★

The Wrong Man
director: Alfred Hitchcock
screenwriter: Maxwell Anderson, Angus MacPhail

間違えられた男 特別版 [DVD] うーん‥冒頭でヒチコックが「これは細部にいたるまで実話です」と宣言しているんだけど、実話を映画にしたものってたいてい不完全燃焼なんだよねぇ。この映画もまさにそう。ヒチコックは「事実は小説より奇なり」と冒頭で言っているけれども、全然そんなことない。ストーリー的には平凡。

もちろん、ヒチコックはストーリーに意外性がないのを分かっていて、映画の中心を家族の愛に置いています。身に覚えのない嫌疑をかけられる善良でまじめな男にヘンリー・フォンダ、庶民的平凡さと美しさをあわせもつヴィラ・マイルズ、そしてフォンダの母や子供たちをひっくるめて、突然ふりかかってきた逆境に耐える家族を丁寧に描いています。

ただ、オチがどうも尻つぼみなんだよなあ。悲劇であれハッピーエンドであれ、もっと何らかのドラマが欲しい。良い役者と丁寧な演出にささえられて、悪くない映画にはなっているけど、ちょっと煮え切らなさの残る、欠点の多い作品でもあります。