本嫌いのオレなのですが、同居人ちゃんがもっていたので、この映画はすでに本で読んでました。本は、正直もひとつだなあと思ったのですが、この映画は素晴しいですね。映画は、本ほどにはストーリーは必要ないということが良くわかります。
言いつくされていることだろうと思うんだけど、あえてまた言えば、これは「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の翻案なわけですね。しかも非常に独創的な。本を読んだときは「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の翻案だとは思っても「独創的」とは思わなかったんですが、映画では独創的だなあと思ったということは、やはり映像の力は強し、ということですね。
いちおう「ホラー」なんですが、たとえば「リング」や「呪怨」とはまったく違う。これは「ホラー」というよりむしろ「ファンタジー」なんですね。まったくトキメくところのないファンタジー。気味が悪いだけのファンタジー。
でも「気味が悪い」といっても悪趣味さは微塵もなく、むしろ品が良く、美しいとさえ言える。音楽の使い方も素晴しいし(こんなに音楽が素晴しいホラーはなかなかないのでは?)、人間のようで人間じゃない者どもの身のこなしは、人間のようで人間でない微妙なバランスの悪さで、これは一種の「舞踏」ですね。
恐いかどうかと言われれば、恐くはないですよね。なんといっても血が一滴もでてこない映画ですから。しかし、恐くはないけれども、気持ちがざわざわする、不安をかきたてる、しかしそれでいて、美しいなあと感心してしまう、そんな映像、そして演出。
伝統的なゾンビ映画を踏襲した優等生的なラストは、観念的になりがちなこの映画の落としどころとしてはとても良いと思う。ちょっとエンディング・ソングはうるさすぎたと思うけど‥。
粗もないわけではないですが、黒沢清作品初見ということで、敬意を表して★★★★★。ところでこのDVDパッケージのダサさはなんとかならないものか。