座頭市 (2003) ★★★★

director: 北野武
screenwriter: 北野武

座頭市 <北野武監督作品> [DVD] オレは勝新座頭市は観てないので、比較はできないす。ということで、純粋に北野座頭市を単独の映画として観たわけですが、けっこうよかった。なんというか、北野映画にしてはずいぶんとライトな感じの映画ですが、そのライトさが新鮮。北野自身も、いつものワンパターン、バイオレンス寡黙中年じゃなくて、ちょっとヘラヘラしためくらのおじさんで、なんだ、無口なバイオレンス中年以外の役もできるんじゃん!と、これまた新鮮に思った。

しかもですね、いつもの生々しくヒリヒリするような、コンクリートブロックで頭をぶんなぐるようなバイオレンス描写がなく、意図的に、「虚構のバイオレンス」を押しとおしている。まず、吹きだす血やざっくりと切られる傷のほとんどがCG。だから全然リアルじゃなくて、テレビゲームのよう。また、音楽も意図的に、80年代っぽい、今どきめずらしい「シンセ音楽」で、これまたテレビゲームっぽい(あとでクレジットみたら、ムーンライダーズ鈴木慶一で、なるほどと思った。ちなみに鈴木は糸井重里「MOTHER」の音楽も担当している)。農民たちの動きもいちいち音楽にあわせたダンスになっていて、それも虚構っぽいというか。

いや、けなしてるんじゃないんだよね。別に良い映画であるためには、リアルである必要は全然ない。この映画の嘘くささも全然悪くない。なんというか、ちょっと演劇的だなあと思った。そう、演劇ってこういう「シンセ音楽」が今でも使われたりするしね。

アクションシーンもすごくカッコいい。先ほども言ったように、血がCGだから「痛さ」は全然ないんだけど、カッコよさは抜群。血がCGなのも、「血のりの代替」にとどまらず、CGにしかできない表現もしていて、たとえば、刀にべっとりついた血を、刀を振って飛ばすなんて、血のりじゃできない芸当で、「おいおい、んなわけねーだろ!」とツッコミを入れつつも、「でもカッコエエ!!」と感じざるをえない。

というわけで、ストーリーとか、そういうのはけっこうどうでも良いという感じの映画。実際よく覚えてないし。観ていて全然感情移入しないし。でも、おもしろいかどうかと問われれば、おもしろい。芸大上がりがつくったかのようなインディーくさい雰囲気があって、それを北野が撮ったという事実自体、おもしろいね。