櫻の園 (1990) ★★★

櫻の園 [DVD]

director: 中原俊
screenwriter: じんのひろあき

あらすじ:
桜の咲きほこるとある地方都市の名門女子高。ここでは毎年、創立記念日に演劇部がチェーホフの「櫻の園」を上演するのが伝統になっていた。これは、卒業していく演劇部の3年生たちにとって、重みのある行事であった。そんな大切な「櫻の園」上演の朝早く登校した部長の志水由布子(中島ひろ子)の髪の毛は禁止されているパーマがあてられていた。スターで主役の倉田知世子(白鳥靖代)はリハーサルになかなか現われない。さらに、部員の杉山紀子(つみきみほ)が昨晩喫茶店で煙草を吸っているところを補導されたというニュースが入る。

リビュー:
ギャルがたくさん出ているというだけで、どんな映画かよく知らないで借りたんですが(こら)、非常にオーソドックスなゲイ映画で感心しました。設定が地方の名門女子高、舞台が演劇部。だから、まあ、これでもかというぐらい典型的な、つまり宝塚系、少女漫画系レズビアン設定なんですが、原作が吉田秋生というせいか、少女漫画的なべったりとしたセンチメンタリズムに一度も陥ることなく、非常にあっさりと恋愛感情が描かれており、これがゲイ映画だとわからないで観る人も多いかと思われます。

登場人物には男性はほとんど登場せず(3人と半分ぐらい?)あとはすべて女性、しかも演劇部顧問の先生と在学生の姉以外はすべて女子高生というこの映画ですが、なんせゲイ映画ですので、いわゆる、男から観た「萌え」の要素は皆無です。で、非常に多い数の登場人物が、混乱することなくきっちりと描かれているところに感心しました。しかし一方で、完全に計算された舞台装置に物足りない思いを感じたのも事実です。映画というよりは演劇的なんですよね。ある人物がこういう台詞を言って、その直後に別の人物がフレームインしてテンポよく次のセリフをくりだすという見事な計算が、その「計算」のまま優等生的に演じられているのが物たりない。まあ、ほとんどがティーネイジャーだっただろう役者さんたちがここまで完璧に演技をこなしていたという事実におしみない拍手を送るのが筋なのかもしれませんが。

それから、音楽は効果的だと思うのですが、画のほうがもうひとつ好きになれなかった。なんでだろう。オレは素人なのでなぜなのか、説明することは不可能ですが、そつなく綺麗だとは思っても心を奪われるような画には出会えなかった。

それでも、最後の「告白」にはじーんとしたし、てゆうか、あんなベタな設定での告白がまったくあざとさや白々しさがなかったところが素晴しかった。脚本、演出、そして「優等生的」とケナしたけれども、やはり役者さんの真摯な演技に心を打たれたということでしょう。

あとは、「女子高の演劇部」という特殊な舞台設定じゃなくて、もっと一般の日常に近い設定のゲイ映画だったらもっとよかったな。