男はつらいよ 寅次郎恋歌(第8作) (1971) ★★★

director: 山田洋次
screenwriter: 山田洋次、朝間義隆
madonna: 池内淳子

あらすじ:
さくら(倍賞千恵子)のクソマジメな旦那、博(前田吟)の母親が亡くなった。その葬式になぜか寅がお悔やみを述べにくる。周囲から微妙に顰蹙を買いつつ、博の父親(志村喬)にとりいる寅。博の父親の「旅先で観た家族団欒の風景」に感心した寅は、相手は子持ちでいいから結婚して家庭をもちたいと思う。そこで出逢った、子連れの後家さんに例のごとく惚れて…。

リビュー:
山田洋次が手掛けた寅さん、初の駄作かも。いや、駄作というほどひどくはないな…。でもいつものキレが今いちないんだよね。もしかしたらオレが何かを見落としているのかもしれないですが。

今回の寅はかなりふてくされてますね。第一作以来の「悪い寅さん」かもしれない。最後は意外や意外、明確にフラレる前に寅さん自らが身を引く形になります。が、そこでなぜ身を引いたのか、今いちその心理が伝わってこない。なんか重要なキューを見逃してるのかなあ、オレ。

その他、ギャグの切れ味も今いち。

ここ数作、ミニスカートにこだわるさくらですが(といってもまあ、おとなしいものですが)、喪服もミニスカートなのが萌え。

本作は非常に残念なことですが、「おいちゃん」役の森川信の、寅さんシリーズ最後の作品です。森川信はこの映画封切り後の数ヶ月後に肝硬変で亡くなります。ちょっとラッセル・クロウに似てないこともない森川信の「おいちゃん」は、寅さんシリーズではさくらについで重要な役でありました。寅さん相手にボケ&ツッコミを自在にこなし、この映画の笑いの中心でした。今までの寅さんシリーズの一番笑えるシーンの多くはおいちゃんのボケだったんだよね。その森川信のおいちゃんがもう観られないなんて、にわか「男はつらいよ」ファンのオレでも、すごく悲しい。そして、病の影響もあってか、本作のおいちゃんは寝込んでいるシーンが多く、いつものキレがない。「オラぁ長くないよ、もう」というおいちゃんのセリフがこの映画であるのですが、それが現実になってしまうとは…。合掌。さようなら、森川信のおいちゃん…。