八つ墓村 (1996) ★★

八つ墓村 [DVD]


director: 市川昆
screenwriter: 大藪郁子、市川崑

あらすじ:
ラジオの訪ね人広告で自分の名前を聞いた辰弥(高橋和也)は、弁護士の立合いの元、老人と接見するが、(以下略

リビュー:
1977年に、野村芳太郎監督+渥美金田一の組み合わせで映画化された横溝映画を、石坂浩二との黄金コンビで数々の横溝ヒット作をはなった市川昆が再映画化! ということで、若干の期待はしてたんですが…。

なんか、いろんな意味で駄目な映画だったなあ。野村の八つ墓は、辰弥役の男ムサいショーケンの精神的葛藤、心理的変化を中心に、熟女の色気むんむんの小川真由美(森美也子役)をからめて中心に据えていたけれど、今回市川は、辰弥役に少年っぽい無邪気さの残る高橋和也(元男闘呼組)を配役して心理ドラマをあっさり切り捨て、トヨエツ金田一を中心とするライトコメディに作りかえました。それは良いと思うんだけどね。市川と野村じゃ、あまりに芸風が違いすぎるし、同じ轍を踏んでもつまらない。

しかしねえ、変わったのは、特に前半は、心理劇からライトコメディへという部分だけで、他の舞台設定があまりに野村版と似すぎているのよ。そりゃ原作が同じなんだから当たりまえといえば当たりまえなんだけど、あまりに野村版で見た光景と似すぎている場面が連続するんで、コメディタッチということもあってパロディを観ている気分になってしまう。

オチは野村版と違うんだけれど、すげー安っぽいメロドラマで、思わず笑ってしまいました。てゆうか、こんな生活感あふれる落ちは横溝じゃない!って感じ。ありえないほど壮大な幕引きだった野村版が懐しい。って一昨日みたばかりだけど。

あとねえ、トヨエツ金田一がどうしても受けいれられない。イメージからいえばもちろん渥美清の方が金田一のイメージからかけはなれているし、外見だけならトヨエツの金田一は金田一っぽい。だけど、どうも、台詞まわしや演技が軽くって…。あきらかに石坂金田一を目指しているんだけど、軽さのなかに深さのようなものがあった石坂浩二とは比べられん。てゆうか、なんであんなにおカマっぽいしゃべりかたなのよ。全然金田一っぽくなくても、役者としての存在感をおしつけがましくなく漂わせていた渥美清のほうがずっと良かったよ。

というわけでかなり期待はずれ。野村版は観たときは「なかなか良かったな」という程度でしたが、市川+トヨエツ版を観たあとでは「野村版は大傑作だったな…」と思えます。