悪魔の手毬唄 (1977) ★★★

悪魔の手毬唄 [DVD]


director: 市川昆
screenwriter: 九里子亭

あらすじ:
昭和27年、金田一耕助(石坂浩二)は鬼首村(おにこべむら)に来ていた。知人の磯川警部(若山富三郎)の依頼で20年前に起こって迷宮入りした青池リカ(岸恵子)の夫殺害事件の解明の手助けをしてほしいということであった。しかし、その事件の被害者は顔の識別が不能で、青池リカの夫が被害者とされたが、それさえ確実ではなかった。金田一がろくに捜査を始めないうちに、気味の悪い老婆が村を訪れ、そして新たな殺人事件が起こる…。

リビュー:
市川・石坂コンビによる横溝正史シリーズの第二弾。今オレは横溝映画をいろいろ観返しているのですが、「犬神」「獄門島」「八つ墓」x2についで5本目ですね。ちょっと飽きてきたかも。でもまあ、この作品はヒットした「犬神」の次ということで、当時は熱烈に歓迎されたことと思います。市川昆も気合いが入っていたようで、144分におよぶ大作となっています。オレはこの作品は観てないと思っていたんですが、最初の犠牲者の桝+如雨露のシーンに覚えがあるので、観たことあるかもしれません。しかしストーリーは完全に忘れていたので無問題。

で、観終わった感想ですが、まあけっこう良かったと思う。何より謎の老婆が不気味だし、横溝正史の定番であるSMちっくな「遺体飾り」も、前作の「犬神」、次作の「獄門」がともにちょっと笑える感じだったのに比べると恐しく美しい。

また、144分という長尺ということで、人物関係が丁寧に描かれていて観客をおいてけぼりにしない。横溝作品はとにかく人間がたくさんでてきて、しかもその人物関係の中にトリックがあるというものなので、ビジュアルは別として実は映画にはあまり向いていないのかもしれない。映画版「犬神」ではそのあたりが不十分だったので、本作品はそのあたりじっくり描こうとしたのかもしれません。まあ、それでも人物関係を追うのはやはり大変ですが。

ただ、今回は丁寧に説明しすぎて犯人がわかりやすくなってしまった。オレは2/3あたりで犯人とその動機がわかってしまいましたよ。そこが惜しい。

あと、市川・石坂シリーズに顕著なコミカルな演出がなんか無理矢理な気がしてちょっとうざい。うざいといえば、市川の映像編集ギミックもいつも以上に炸裂していて、しかもあいかわらず大して効果的でもカッコよくもなくてうざい。それから全体に役者の演技(というかその演出)が大袈裟でちょっと醒める。

でもまあ、横溝映画の中では軽く水準は超えているでしょうね。役者の演技はもう一つ好きになれなかったけど、若山富三郎が非常に良くてそれで救われているし、コミカル演出がすべっているとか冗長だとか言う欠点も、老婆や遺体などの恐怖系の映像がなかなか良いのでうまく補われています。佳作です。

今んとこ、
犬神家>八つ墓(野村版)>手毬唄>獄門島>(超えられない壁)>八つ墓(市川版)
という感じです。え?獄門島は★★★★つけていたじゃないかって? まあ、そのへんは適当ですから。