半落ち (2004) ★★★

半落ち [DVD]

director: 佐々部清
screenwriter: 田部俊行 佐々部清

あらすじ:
かつて優秀な刑事としてならした梶聡一郎(寺尾聰)がアルツハイマーを患う妻啓子(原田美枝子)に懇願されて殺したとして逮捕された。単純な嘱託殺人と目された事件だったが、取り調べをしていた志木(柴田恭兵)は、妻を殺して出頭するまでの二日間、梶が何をしていたのか、どうにも釈然としない思いだった。しかも梶が妻を殺した後、新宿歌舞伎町に行っていた形跡もあった。警察の信頼が失墜するのを恐れて「空白の二日間」を揉み消そうとする上層部と志木は対立。そこへ検事の佐瀬(伊原剛志)が警察の「身内」である梶の取り調べに疑念をはさむことになった…。

リビュー:
うーーーーーーーーーーーん、微妙。途中までは、様々な欠点に目をつぶれる、そんな映画かなと思ったんだけど。最後がメロメロのメロドラマになってしまって、目をつぶる気持ちが萎えてしまった。

てゆうか、そもそもなんで「空白の二日間」がそんなに問題になるのかがわからない。最後まで観ても「ほらやっぱり、別に問題ないやん」としか思えん。検察の伊原剛志が眉間に皺をよせて「空白の二日間」を執拗に追求すればするほど、「いや、てゆうか、なんでそれが問題なの?」としか思えないし。最後の裁判シーンなんて、いったい誰が検察で誰が弁護人で誰が裁判官なのか…おまえら役割ぐちゃぐちゃやんけ!

それでも、この作品が駄目作品になってないのは、抑えたトーンの端正な画と、ベテラン役者たちの演技の存在感のおかげ。特に主演の寺尾聰は見事。アルツハイマー設定の原田美枝子よりもはるかにアルツハイマーっぽい放心した演技は隙なくすばらしい。キメすぎという感じの柴田恭平もギリギリのところで大根になりそうでいてやっぱり大根になってしまっていますが、柴田節としか言いようのないオーラでなんとかあやうい均衡を保っています。しかし柴田はなぜか映画後半では全然登場せず、後半は伊原剛志ががんばってますが、これは高飛車なだけで今いち。そのかわり、弁護側の役回りの國村隼が素晴らしい…んだけど、出番が多くなりそうと見せかけておいて全然出番が回ってこないんだよなあ。ちぐはぐ。本作品もっともインパクトのある迫真の演技を魅せてくれたのが殺された原田美枝子の姉の役の樹木希林(全然外見が妹に似てないんですけど…)。こんなに演技が巧い人とはしらなかった。全体的に年寄りほど演技が素晴らしく、若いほど演技が駄目駄目な、そんな感じ。個人的には嫌いな西田敏行も良かった。

…というふうに玉石混淆ながら、そして演出がちょっと大げさすぎるきらいがありつつも、役者さんの仕事ぶりを楽しめる、そんな余裕を持てる映画だと思って観てたんだけど、最後に見せ場がある吉岡秀隆のド大根ぶりがちょっと…あんなジャニーズみたいな裁判官はおらん。いやいてもいいけど、この映画的にはぶちこわし。

ということで、最後はひたすらくっさいお涙頂戴の展開。あーあ。