事前の報道通り、ディズニーがピクサーを買収しましたね。もちろんこれはピクサーが弱いからとかそういうことではなく、むしろ逆で、ヒット作が出せずに次第にピクサーへの依存が強くなりつつあるディズニー(ディズニーはピクサーの映画の製作費を一部持つと同時に配給を請け負っている)が、ピクサーに逃げられるなら、いっそ復活の兆しの見えないディズニーのアニメーション部門をピクサーそのものにしてしまおうという動きであるのは誰の目にもあきらかです。つまり、自身ではアニメーション部門を立て直せないので、ピクサーを「迎え入れ」て、助けてもらおうという。そうすれば、今年で切れるピクサーとの配給契約を更新するか心配することもないし、低迷するディズニー映画も復活できるという一石二鳥。
ということで、株式交換による買収なんですが、ピクサーには「来てもらう」という構図なので、当然ピクサーに有利な株式交換となってます。ピクサー1株につきディズニー2.3株の交換ということですが、ピクサー1株の時価はディズニーの1株の時価の2倍強ですので、数字で受ける印象ほどのすごい割合ではなさそうですが、それでもピクサー側に有利であることには変わりなく、また、条件として、ディズニーのアニメーション部門をピクサーの指揮官のジョン・ラセターとエド・キャットムルに完全にゆだねるということになっているそうです。
さらにここが肝ですが、Apple CEOにしてPixar会長兼CEOでもあるスティーブ・ジョブズ*1がディズニーの筆頭個人株主となり、かつ、ディズニーの取締役の一人として就任することになります。ディズニーの保守的な社風とジョブズの気質は合わないとされていますが、いかんせんディズニーの調子がいまいちで、突破口が欲しいところであるので、iPodとiTMSで時代の寵児になっていてメディアにも引っ張りだこのいわば「カリスマ経営者」ジョブズの参画は、保守的なディズニー社にも期待されるものが大きいかと思います。たとえ「14人の取締役の1人」にすぎないとしても、存在感はその数字にとどまらないでしょう。
とはいえ、これがAppleにどういう影響を及ぼすかは未知数というか、案外大した影響もないかもしれませんが、Appleのメディア戦略のうちの映像部門の拡充について非常に大きな一歩を踏み出したのは間違いないと言えるのではないでしょうか。ワクワクテカテカ