ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明 (1991) ★★

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明〈デジタル・リマスター版〉 [DVD]

黄飛鴻
director:ツイ・ハーク
screenwriter:ツイ・ハーク、ユエン・カイチ

あらすじ:
政治的にも文化的にも西洋列強の波に揉まれる清。多くの貧しい中国人が一獲千金を夢みてアメリカに渡り、雑巾のように使い捨てられていった。その影には西洋領事館と裏でつながって甘い汁を吸う悪の一団がいた。鍼医師であり拳法の達人であるウォン・フェイフォンがこの一団と対決する。

リビュー:
うー、駄目だった。とにかくストーリーが陳腐すぎる。いや、陳腐さがB級な味となって許せれば良いのだけれど、本作品は多分に政治的な大河ドラマであり、しかもかなり製作費がかかっていると分かるだけに、安っぽいストーリーが全然笑えないのであります。

敵役を徹底して悪者に描き、悪事のかぎりを尽くさせて復讐への機運を盛り立てるというのは香港アクション映画の基本だと思うんだけど、今回はとにかく、西洋の文明化の波にさらされる激動の清の時代の中国を舞台に、毛唐どもと毛唐におもねる者たちが非人間的な悪者として描かれているわけです。さらに、西洋的近代化の波に翻弄される中国人を「被害者」として描ききる。まあ、そういう単純化した図式でこそストーリーが盛りあがるというものなのかもしれませんが、その天真爛漫な政治性にひっかかりを禁じえないのも事実。もし日本人が舞台を日本に置いて同じような映画を撮ったとしたら、やはりオレはすごいイヤだろうね。

政治性云々を別にしても、映画として粗いのは否めないし、格闘というよりはほとんど曲芸と言えるアクションにももう一つ盛りあがれない。ただ、ストーリーにしてもアクションにしても密度の濃さは保証つきで、よくぞここまでと感心したりもしました。はまれる人ははまれると思う。

…と、とってつけたようなフォローをしておきまして、今日はこのへんで。