教育再生会議の中央集権主義への批判

教育再生会議の「国が、国が、国が何でもやるんやぁ〜っ!」という姿勢に異論が表面化しているようです。まあ、当然でしょうね。

以下、主な関連ニュース。

まず全国知事会の批判。

教育再生会議:教育委員会見直し案に知事会反対 (mainichi-msn: 2/6)

 政府の教育再生会議が都道府県教委に対する国の「是正命令権」を事実上復活させる案をまとめたことに関し、全国知事会(会長・麻生渡福岡県知事)などは6日、地方分権の流れに反するとして反対意見の声明を発表した。声明では、国による統制を強化し、00年施行の地方分権一括法による改正前の教育行政に後戻りさせかねないと指摘した。

全国教育委員長協議会の批判。

教育再生会議 全国教育委員長協議会が会議の公開など要望 (yahoo/mainichi: 2/14)

 教育委員会制度の改革などを提言している政府の教育再生会議に対して、都道府県の教育委員長らで構成する全国都道府県教育委員長協議会などは13日、会議の公開などを要望した。(中略)教委制度などに関する議論について、地方分権の視点に立つよう指摘し、また会議が非公開で情報が交錯しているとして会議の公開を求めた。
 さらに訪問後の会見で、教員評価などを巡り、「(再生会議の議論の中に)一部の事象を全体の傾向とする一方的とらえ方が見受けられる」と批判。正確な現状分析と実証データに基づき十分な議論をするよう訴えた。

「(再生会議の議論の中に)一部の事象を全体の傾向とする一方的とらえ方が見受けられる」というのはオレも強く感じています。関連する批判としては以下のようなものがあります。

教育再生会議:県教育長が苦言「現場の意見聞いてない」 /神奈川 (yahoo/mainichi: 2/14)

 政府の教育再生会議の第1次報告について、県教育委員会の引地孝一教育長は13日、定例記者会見で「報告は法律改正まで視野に入れながら拙速な議論を進め、大きな影響を受ける教育現場の意見をまったく聞いていない」と苦言を呈した。(中略)
 引地教育長は特に、社会での専門的な知識や経験がある人を例外的に採用する「特別免許制度」での採用を「全体の2割確保する」とした再生会議の提案について「『とにかく今の公教育は駄目』だとして、なぜ2割を特別免許で採用するのか根拠が分かりにくい」と批判した。
 全国で年間約2万人の教員採用があると試算して、4000人が教員資格がないまま採用されることになるという。引地教育長は「免許制を前提に更新制度導入を訴える再生会議が、教育資格のない人を2割も入れるのは納得できる話ではない」と指摘した。

もっともな指摘です。とにかく再生会議は「今の先生は駄目だ」ありきで、「今の先生に比べたら素人だって優れている」という無茶な論理で突っ走っている感じがします。

次に、首相の諮問機関、規制改革会議の批判。

教育改革:教委改革「分権に逆行」 規制改革会議、再生会議をけん制 (mainichi-msn: 2/16)

 政府の規制改革会議(首相の諮問機関、草刈隆郎議長)は15日、教育再生会議第1分科会が先にまとめた教育委員会の改革案に対する見解を公表した。再生会議が、国が教委に是正勧告・指示を行えるよう提言したのに対し、地方分権に逆行しかねないと指摘し「教育に関する国の権限を強化しない制度設計とすべきだ」と強くけん制した内容。教委改革をめぐり安倍晋三首相の下にある二つの有識者会議の意見が真っ向から対立した形で、政府が今国会提出を目指す地方教育行政法改正案など教育3法改正案の作成に影響しそうだ。(中略)規制改革会議の見解は「上意下達システムの弊害を助長することがあってはならない」と批判している。

さらに一週間後。

「教育再生会議、深い議論を」 規制改革会議議長が異論(asahi: 2/24)

 政府の規制改革会議の草刈隆郎議長(日本郵船会長)は23日の記者会見で、教育委員会改革案を巡る教育再生会議の議論について「いろんな意見が、教育というのにはある。一方的にああいう意見だけで、しゃんしゃんしゃんで終わってしまうと非常に浅い議論だ。少しでも深い議論をしてもらいたいというのが我々の要望」と述べ、改めて異論を唱えた。
 規制改革会議は20日に教委改革を巡る公開討論を文部科学省に申し入れたが、同省は応じていない。草刈氏は重ねて求めていく意向を示した。

まあ、安倍は中央集権主義なので、こういう批判にもめげずに教育再生会議のお膳立てを押していくでしょうが。

何事も中央と地方・国民の権限のバランスというものがあると思います。ただ、日本は狭いので、ともすれば、「国が管理すれば話が早い」となってしまいがちです。

でもねえ、それは「駄目な管理職」の典型だと思うんだけどねえ。それじゃ「部下」は育ちませんよ。

常々主張しているように、これから少子化で学校の淘汰が急激に進んでいくのは間違いありません。淘汰のなかで教育内容を個々の教育機関が工夫していくわけですが、それが望ましい方向に行くような道筋を整備するのが国の役目でしょう。教育の仕方を国が決めてしまうようではいつまでたっても日本の教育は「お上のいいなり」ですよ。ひるがえって国民の自主性も育たないと思います。

再生会議も、様々な分野で成功して引退間近のじいさんが多いので、「わしら長老の言うことを聴いとけばええんじゃ」「わしらが賽をふるんじゃ!」と言いたくなるのもわかりますが、少しは若かったころの独立の精神を思い出して、国民に賽を預けるぐらいの気概をもって欲しいものです。