ボウリング・フォー・コロンバイン (2002) ★★★

我ながら短絡的だとも思いましたが、先日ヴァージニア工科大で32人が殺された銃乱射事件があったので、1999年に13人が殺された乱射事件をきっかけに「銃社会」について考えられたドキュメンタリー映画を観ました。ご存知、左翼活動家(といってもコミュニストに非ず)、マイケル・ムーア監督作品。

オレは以前書いたように精神的にはリバタリアンで、右派か左派かといえば左派なので、ブッシュは反吐が出るほど嫌いだし、マイケル・ムーアのような左翼は、全面的に共感しないけれども、ひっかきまわしてくれる分には大いにやってくれと思います。ムーアがこの映画でオスカーをとったときに「恥をしれ、ブッシュ!」と絶叫したのは痛快でした。今時テレビ電波にこんなストレートなアジ飛ばせるのはマイケル・ムーア、おまえしかいないよ。

で、この映画を観たわけですが、思ったよりぬるいなあと。おそらくマイケル・ムーアはせいいっぱい「トーンダウン」して、左翼じゃない人にも鑑賞できる映画にしたんだと思います。でももっとはじけてもよかったのになあ。

とはいえ、途中アジテーション的「アメリカのダークサイドな歴史」をまぜるなど、端々にムーア節は炸裂しています。が、映画の全体のトーンが穏やかなので、こういうアジ的映像がちょっと浮いている気がしました。また、銃社会の根底に黒人差別問題があることをかなりしつこく掘り下げようとしていましたが、今いち説得力に欠け、しかも、結論をはっきり出してないのでもひとつでした。

一方、銃社会の背後に「恐怖を煽るメディア」があるという視点は説得的だと思いました。特に、同じく銃社会であるカナダとの比較は興味深かった。もっとも、アメリカの問題が「恐怖を煽るメディア」にあるならば、銃規制しない解決法があるんじゃないか…と思わせておいて、映画のトーンがまた「銃規制」に戻るあたり、一貫性に欠けると思いますね。「突撃インタビュー」は嫌がらせにしか思えないし。ラストのチャールトン・ヘストンのインタビューもオレの眼には不完全燃焼にしか見えませんでした。だから何なの?って。

ところで、ムーア本人は青少年のころはコンテストに優勝するほど銃に親しんでいたそうです。ただ闇雲に銃嫌いというより、銃のおもしろさや快感もおそらく知った上で論理的に銃規制派に転身したということがうかがえて、その点がこの映画に落ち着きを与えているような気がします。色々興味深いこともあったし、観て良かったです。★★★★に近い★★★。

ちなみにオレ自身は一貫して銃規制派(←これのどこがリバタリアンだ!)です。ついでにいえば、反戦主義者でもあります。昨今、右派・右翼が台頭して、反戦ということが揶揄されるような風潮がありますが、まことに馬鹿げた風潮であります。