シェーン (1953) ★★★★

西部劇の名画を今更ながら初鑑賞。「過去を持つ流れ者が,ならずものに悩まされる開拓者のもとを訪れ,何の見返りもないのに手を貸す」という,「七人の侍」「用心棒」などの黒澤作品や,イーストウッド/レオーネのリビジョニスト・ウェスタンで良く使われる構図の古典的作品ということで観た。

ストーリーはいたってシンプルで優等生的だが,想像していたよりも深みがあるストーリーで良かった。インディアンを先住民として肯定的に認める発言がある点,主人公の恋心が決して実らない点,バイオレンス描写が丁寧でリアリスティックな点,敵対者の主張にも一定の合理性があって善悪がはっきり分けられない点,主人公が「ガンファイトの時代は終わった」とはっきり自覚している点,ヒロインがはっきりとした「反・銃社会」の主張を持っている点,悪役の雇われガンマンが異様なカリスマ性を持っている点,男同士の友情にセクシュアリティが介在しているようにとれる表現がある点など,ウェイン/フォードの黄金期の勧善懲悪西部劇にはない「新しさ」がいたるところにみられ,1952年の「High Noon(真昼の決闘)」(善玉の保安官より悪玉の方が人望があるという作品)とともに,西部劇の成熟を感じさせる作品。その後,1956年のダークな「The Searchers(捜索者)」(ウェイン/フォード)を経て,60年代のイーストウッド/レオーネのスパゲッティ・ウェスタン(マカロニ・ウェスタン)〜リビジョニスト・ウェスタンに繋がる。