ウディ・アレンの重罪と軽罪 (1989) ★★★

正直な話,見始めて,いつものウディ・アレン映画と同様の舞台設定…マンハッタン,芸能界や医者の世界などの上流社会,夫婦の危機,孤独など…に,「またかよ!」という思いを禁じ得ず,のめりこめなかった。まあ,初期のころはそのスノッブさに,若いころのアレンの勢いが加わってパワーになっていたと思うのだけど,1989年のこの映画だと,ちょっとそのパワーも抑えめで…。

で,いちおうコメディではあるのだが,抑えめのトーンのまま最後まで行き,そして,驚くことに,そのダウナーなトーンのまま,最後でさらにダウナーになって終わってしまう。ラストで何かひねりやどんでん返しがあると思ったら,そのまったく逆が来た。観ている者の背中を押して人生の暗い場所に突き落とすような,そんな地味にダークな終わり方で,ちょっと意表をつかれると同時に,考えさせられた。

ただ上述したように,パズルのピースは,今までのウディ・アレン映画のピースの焼き直しのようなところがあるのと,あと年のせいでウディ・アレンがくたびれていつもの笑いのパワーが控えめだということで,ぐいぐい引き込まれるという感じではなかったのがちょっと残念。ちなみにAll Movie Guideでは★★★★★満点がついてます。