ミリキタニの猫 (2006) ★★★★

マンハッタンで絵を売る「自称巨匠」の日系人ホームレス画家、ツトム "ジミー" ミリキタニを追ったドキュメンタリー。

まったく期待していなかったがこれが意外に良かった。ミリキタニはかなり高齢なのだが、パワフル。自分は絵の「巨匠」だと断言してはばからない。さらに戦時中にアメリカ政府に強制収容された日系人の一人であり、アメリカ政府への怒り(そして戦争に対する怒り)はとどまることを知らない。そんな扱いにくいミリキタニをドキュメンタリー監督リンダ・ハッセンドーフは、最初は距離を置いてそれほど熱心でもなく追うのだが、そこに9/11が起こり、有害な灰がホームレス・ミリキタニへの健康に影響を及ぼしているのを見かねてハッセンドーフがミリキタニを自宅へ招くことから本格的な交流が始まる。特に大きなオチやドラマも押し付けがましいメッセージ性もなく、淡々と進むドキュメンタリーだが、一見何もないところに、老人問題、福祉問題、ホームレス問題、国籍問題、家族のつながり、人種、国、戦争、そして人のこころの暖かさといった問題が小さく息づいてハートウォーミングながら考えさせられる映画。ちなみにミリキタニ氏は今でも健在らしい。やっぱりパワフル!