アンヴィル!〜夢を諦めきれない男たち〜 (2007) ★★★★

監督:サーシャ・ガヴァシ、主演:リップス、ロブ・ライナー

80年代スラッシュ・メタルのパイオニアといえば、メタリカメガデスアンスラックスだが、それに少し先行していた、「パイオニアのパイオニア」がカナダのアンヴィルというバンドだった。当時そこそこ人気があったものの、前述3バンドほどはブレイクせず、消えていった…のは、世間一般からの視点で、アンヴィルのオリジナル・メンバーであり幼なじみのリップス(vo, g)とロブ・ライナー(dr)は30年間、一度も解散せず、昼間の地味な仕事をしながら活動を続け、「夢」を追っていた。そんなアンヴィルにヨーロッパ・ツアーの話が舞い込むが…。

という話を、トム・ハンクス「ターミナル」の脚本家で、アンヴィルのロード・クルー(ツアーの雑用係)をやっていたことがあるサーシャ・ガヴァシがカメラで追ったドキュメンタリー。

音楽業界を多少なりとも知っている人なら、話の展開自体は「わりにありがちかな」と言う範囲内だが、リップスとロブ・ライナーのキャラクターが憎めないので、引き込まれる。禿げかかったリップスの後頭部を見ると、「頑張れ!」と応援したい気持ちにならざるをえない。

おもしろかったのは、破天荒で言葉遣いも下品なリップス、冷静で落ち着いたライナーという対比とは裏腹に、前者は裕福でインテリの家の出で、後者は明らかにワーキングクラスの家の出らしいというところ。そんな対照的な二人だが、高校時代から50代の今までずっと親友だという事実だけで泣ける。