偶然の旅行者 (1998) ★★★★

監督:ローレンス・カスダン、主演:ウィリアム・ハートキャスリン・ターナー、ジーナ・ディヴィス

息子を亡くした失意の旅行ガイドブック・ライター(ウィリアム・ハート)が、妻(キャスリン・ターナー)からも別れを切り出され、絶望的な気持ちで夢遊病者のように暮らしているところに、風変わりなドッグ・トレーナー(ジーナ・デイヴィス)に出会う。という話。

ハリウッド映画ながら、おそろしくロー・キーというか、淡々した、砂を噛むようなトーンで話が進む。だるいと思いそうになったところで、前半の、ウィリアム・ハートジーナ・デイヴィスの心が打ち解けるところで一気に見せる。これは脚本も良いのだろうけど、それ以上にキャストの演技の力だろう。特に、鬱々としたウィリアム・ハートの、死んだような演技は本当に素晴らしい。感情の起伏が見えないのだが、その裏側には深い悲しみが見て取れるのである。

こうやって書くとなんだか暗い映画のようだが、必ずしもそうでもなく、特にラストは50年代のハリウッド恋愛映画かと思うような鮮やかでベタな展開。しかし、ダウナー。そこがおもしろい。