スペル (2009) ★★★★

監督:サム・ライミ、主演:アリソン・ローマンジャスティン・ロング

スパイダーマン3」でものすごくやる気のない演出を見せていたサム・ライミ。もう「スパイダーマン・シリーズ終わらせたいんだろうなあ」というのが分かりすぎるほど分かったが、そのライミが出世作の「Evil Dead」「Evil Dead II」流のスラップスティック・ホラーに戻って来た!

これが期待通りというか期待以上の「ライミ印」。CGを抑えたローテク特殊効果、バタンバタンと音を立てる扉、窓、ありえない血の噴水、飛び出す眼球、噛み付く老婆、喰いちぎられる髪の毛、泥水まみれになる主人公、古代の呪い、ローアングルで疾走するカメラ、そしてズームイン、パンの嵐。いやー笑った笑った。サム・ライミのホラーが引き起こす笑いは、多くのホラーにある「苦笑系」の笑いじゃなくて、監督が意図した笑いなので気持ちがいい。

「Evil Dead」シリーズと違うところは、ドラマがちゃんとあるところ。脚本も演出も丁寧で、メインストリームで培った基礎体力が生きている。主人公いたぶるだけのホラーとはひと味違う。主人公は誰にも思い当たる節のある間違い(とも言い切れないような間違い)をつい犯した小市民だ。正義の味方でもないし、悪人というわけでもない。婆さんの怒りを買ったのもわかるような気がするけど、呪いをかけられるほどでもなあ…という微妙なラインなので、観客はどこかハラハラと不安な気持ちで主人公の行く末を見守るのだ。

やっぱりサム・ライミは映画のこと良く分かってるわ。邦題が原題("Drug Me To Hell"〜私を地獄に引き摺り入れて)の「そのまんま感」とB級感を損なっているのが残念。