レクイエム・フォー・ドリーム (2000) ★★★

監督:Darren Aronofsky

「ボストン映画祭」の上映作品のひとつを見た。主演(…いや助演か?)女優(エレン・バースティン)と監督の舞台挨拶あり。インディーフィルムの「π」をとった監督(ex居候と誕生日が同じことを今発見)の二作目となるこの作品、うーん、なんというか、キョーレツでありました。監督は塚本晋也の影響を受けていると聞いていて、確かにそんな感じだったが、このバッドテイストぶりは、塚本を通り越して(同じく塚本の影響下にある)福居ショウジンの「ピノキオ ルート964」に迫るものがある…というとさすがに言いすぎ。でも、映画祭にも関わらず(つまり、前知識がある客層にも関わらず)、映画の最中にブゼンとした態度で席を立つ客もいた。

この映画から「家族の崩壊」「ドラッグの恐怖」「現代医療への風刺」などを読み取ることは簡単だが、この映画はそんなメッセージを本気で送り出そうとしているとは思えない。ここで描かれているのは「徹底した肉体的破滅」であり、その先には何もない。ただただ登場人物を破壊して終わり、そういう映画。「家族」「ドラッグ」「現代医療」という記号は、のちに控える破滅のための舞台装置にすぎないように思えた。それゆえ、怒って帰った客がいるというのはこの映画にとっては勲章だろう。

耽美的でただベッタリとメランコリックな音楽、メタリックな映像とテンポ、スタイリッシュさ、そう、この映画は「見るトリップホップ」なのだな。 (09/16/2000)