日本人だから文法的一致が苦手だというわけでもないんだ

今年初めて、欧米圏からの交換留学生のための専門の授業を担当しています。この交換留学生たちは「交換留学生」であるにも関わらず、うちの学部教育とは独立したプログラムで動いているため、担当している授業は、交換留学生ためだけの授業(うちの学部生も聴講できるが)で、英語でやんなきゃいけないんですね。英語で教えるのなんて在米時代以来なので、日々勉強です。てか改めてオレ、英語しゃべれねーーー。

それはともかく、この交換留学生たちは、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアといった英語圏が中心であるものの、フランスやドイツからも来てます。オレの授業に登録している29人中、5人がフランス人、4人がドイツ人ですから、予想を超えて多いですね。

で、このまえ、手始めに、エッセイ(小論文)の課題を出しまして、提出された課題を今読んでいるんですが、フランス人、ドイツ人は英語が母国語ではないので、出されたエッセイの英語としての完成度はまちまちであります。たまたまかもしれませんが、うちのクラスでは、ドイツ人よりフランス人のほうが英語ヘタですね。まあ、ドイツ人には大学院生が混じっていて、その学生の英語はオレよりずっと上だったりするんですが。

さて、その英語の話なんですが、日本人として、日々、英語の文法的一致現象には苦労しています。ようするに、三単現でsを付けるとか、主語が複数でbe動詞をareにするとか、そういう主語と動詞の文法一致です。英語書いているときもときどき間違えますし、話すときはかなり間違えまくりです。てか、話しながら「あれ、主語複数だっけ?単数だっけ?」とか考えながら話しているんですから、そりゃダメダメですわ。

でもねえ、日本語にはないんですよ、一致現象が。やれって言われてもそんなに簡単にはできないっすよ!

その点、ヨーロッパ圏の人は有利だよな。だってヨーロッパの言語は英語よりはるかに一致現象が発達してますからね。三単現どころじゃなくて、すべての人称ごとに動詞の活用が異なるし、形容詞と名詞の一致現象も珍しくないし、冠詞だって、例えば英語で言えばtheにあたるものが、単数・複数・男性・女性・中性で形が異なるなんて、ごく当たり前。シンプルすぎる英語の一致現象なんてお茶の子さいさいでしょ。日本人はその点ちょう不利なんだyo!!

…と思っていたんですが、英語がヘタなフランス人学生のエッセイを読むと、けっこう一致間違えてますね。たとえば、こういうのがありました。

Does Whorfian hypotheses means that ...

「Doesが来たらmeansじゃなくてmeanだろう!」とか、「そもそもhypothesesは複数だからDoesじゃなくてDoじゃん!」とか、日本人がやりそうな一致のミスを堂々とヨーロッパ人もやっていてちょっと嬉しくなりました。(後者のポイントについては単にhypothesisのスペルミスかもしれんが。)

一致が豊かな言語の話し手でも、他の言語の一致はやっぱり間違えるんだ。日本人だから文法的一致が苦手だというわけでもないんだ。

ということで、これからは胸はって英語を間違えよう。