欧米の学生はノートを取らない

今学期、欧米から来た交換留学生(米・英・独・仏など合わせて30名弱)向けの専門の授業を教える機会をもらっているのですが、日米の学生気質の違い、特に授業に対する姿勢の違いを実感して、軽いカルチャーショックを受けています。

いや、とはいえ、ぼくは自分がハー大の大学院生だったときに、ハー大の学部生を教えていたので、アメリカの大学生気質はそれなりに知っていました。ただ、そのときは日本の学生を教えたことがなかったものですから、比較という観点がなかった。今は日本に戻ってはや6年半、日本の大学生スタイルにすっかり慣れて自分もそれにアジャストしていたものですから、あらためて欧米の学生を受け持つと新鮮に驚いてしまうというわけです。

では、どういうところが違うのかというと、例えば、日本の学生だと授業中の挙手がなかなかない、消極的、受け身なのに対して、欧米の学生の場合、けっこう頻繁に手が挙がって、授業への参加に比較的積極的であるという、良く言われるような違いは当然あります。今回はそれ以外の部分に触れたいと思います。

まず、欧米の学生を受け持って約1ヶ月半(授業は週2回ですから、授業回数でいえば3ヶ月分教えていることになります)、中間試験も一度終えてその出来を精査して分かったことですが、奴らはあまりノートを取らない! とにかくここは日本の学生と決定的に違うと感じます。

これはうちの学科が女子学生率7割ということもあるんでしょうが、日本人学生は良くノートを取る。講義の授業でも、基礎演習の授業でも、ゼミの授業でも、良くノートを取ります。ぼく自身は日本で大学生やってたときはノートなんてほとんど取らなかった(←ノートなど取らなくても分かるという自信過剰によって)ので、今でも学生のノート取りっぷりには日々驚いてしまいます。日本人学生は、授業中に先生が教える内容を記録するのが授業を受けることだと思っている節があります。ですから、日本人学生は授業中、下を向いて書いている時間が(欧米の学生に比べ)相対的に長い。

ところが、欧米の学生は違います。まず、教室の机が、それぞれの椅子にちっちゃな机がくっついているタイプなので、そもそも机の上に物があまり乗らない。教科書とノートの両方を乗せることは非常に困難です。

そのせいか、欧米の学生は、授業中、教科書さえ出さない。教科書開いて、と指示するまで教科書を出さないほどです。よく考えたらハー大の学生もそうでした。

で、元の話に戻りますが、ノートもあまり取らない。で、ノートを取らないで何をしているのかというと、授業を聴いて発言しているのです。いや、もちろん聞いてないでぼーっとしている学生もいますが、それは日本人の場合も同じで、ノートも何も取らずぼーっとしている学生も当然少なからずいます。そういうのはおいておいて、授業を真面目に受けている層の態度が日本と欧米で違うんです。

つまり、日本人学生は下を向いてノートを取る。欧米の学生は上を向いて発言をするが、ノートはあまり取らない。

これに気付いたのは、留学生向け授業の中間試験で教科書の一節を抜き出して、「この一節の意味するところを説明せよ」という問題を出したときです。授業中も取り上げたネタであるにも関わらず、驚くことに、授業でやった内容とは違う、オリジナリティーあふれる間違った解答が続出したのです。ぼくは採点しながら、「なんでこいつらはオレが説明したことの真逆のことを書いてるんだ!」と怒り心頭でありました。日本人学生に同様の問題を出した場合はこうはなりません。もっと、ぼくが説明した内容に沿った解答が多くなります。

これで思い当たったんですね。なるほど、こいつらノート取ってないんだな、と。そういや、あやつら、上向いていてちっとも下向かない。書き取ってない。もちろんぼくの英語がヘタで言いたいことが伝わってないというのもあるんですが、それだけじゃなくて、やっぱり日本人学生の方が、「先生が言ったことを再生する能力」は高いと強く感じます。

しかし、それが良いことなのかどうかはもちろん議論の余地があると思います。とりあえず、日本人学生は生真面目で従順で受け身、欧米学生は野放図で荒削りでインタラクティブという気質の違いを痛感している今日この頃です。

ちなみに、もう一つ欧米、いや、アメリカの学生と日本人の学生の顕著な違いがあります。それはアメリカの学生が異常にテストの点数にうるさいということです。この話はまた後日。