セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ (2000) ★★★

セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ [DVD]

Cecil B. Demented
director: John Waters
screenwriter: John Waters

あらすじ:
メリーランド州ボルチモアの式典に参加した高飛車な大物女優ハニー・ウィットロック(メラニー・グリフィス)は、式典を乗っとったシネマ・テロリストたちに誘拐されてしまう。カリスマ・インディー監督、セシルBディメンテッド(ティーヴン・ドゥウォーフ)率いるシネマ・テロリスト軍団は腐ったハリウッド映画と対極の、リアルで過激な映画を、誘拐したハニー・ウィットロックを無理矢理主演にして撮ろうとしていた…。

リビュー:
「下劣の帝王」ジョン・ウォーターズも、昨今はオスカーの審査員もやってるんだよね。だからというわけではないのかもしれなけど、この「メイン・ストリーム映画を撲滅せよ!」というシネマ・テロリストたちの映画もどうも今いちヌルい。

オープニングのタイトルロールはけっこういいんだよね。ピッチが狂いまくる音楽に、60年代のC級SFが始まりそうなチープな映像エフェクト。その後は、意図的に70年代低予算映画っぽい、退色したような画に、これまた意図的に茶番っぽいドタバタ風刺劇。ウォーターズ作品でいえば「ヘアスプレイ」(1988)に近いかも。ただ、「シネマ・テロリスト」という過激そうな題材を扱っているのに、「ヘアスプレイ」より全然スリルがないのはどういうわけか。

「どういうわけか」は、まあ、あきらかで、プロットにまったくドラマがないからなんだけどね。

最初のポイントに戻るけど、いまやオスカーの審査員でもあるウォーターズであるからして、こういう極端な視点の映画風刺はもう無理だと思うんだよね。もちろんこれは、ウォーターズがハリウッドシステムに気兼ねしているとかそういうことじゃなくて、「ハリウッド映画だって良いものはあるし、インディーだから即良いってこともない」ことが分かりすぎているからこそ、「ハリウッド映画をぶっとばせ!」という映画を作っても、中途半端にならざるを得ない。確かに、ウォーターズのシンパシーはあきらかに主人公たち、そして、カンフー映画ファンやポルノ映画ファンの方に向いているし、暖かいんだけど、一心同体になるほどには入れこんでもいない。実際、この映画観ても、「このシネマ・テロリストたち、馬鹿だなあ‥」としか感じられない。

と、いろいろ文句言ったけど、まあ、ウォーターズ好きなら観ても腹は立たない映画だと思う。許せる。オレも、なんやかんやで、ヌルい内容&しまりのない展開ながらも、ウォーターズ印の茶番ドタバタを楽しみました。スティーヴン・ドゥウォーフ、メラニー・グリフィスマギー・ギレンホールアリシア・ウィットなどの多彩な役者がウォーターズのB級ワールドに付きあっているのを観るだけでもおもしろい。あと、「パッチ・アダムズ ディレクターズカット」にはちょっと笑った。観たくねー

ちなみに、個人的に一番良かったのがDVD特典のウォーターズのインタビュー。ウォーターズが動いているのちゃんと観たの初めてかも。ゲイだとは聞いていたけど、予想以上のおねぇなしゃべり方でおもしろかった。