「正しい和食」認証問題とか

カテゴリは[news]の方がいいと思ったけど、流れ上[thoughts]で…。はてなでも複数のカテゴリつけられるようになったらいいのにな。

さて、前回は安倍政権は、「文化面で大きな政府、経済面で小さな政府」を目指していると書きました。そうそう、ホワイトカラーエグゼンプションとか、「経済面で小さな政府」の典型的な動きですね。これについても思うこともあるのですが、それはおいといて。

「正しい和食」認証問題とは、海外での「我流」の日本食レストランの増加を憂えて、正統的な日本食レストランを農水省がお墨付きを与えて「正しい和食」を保護?しようという動きです。

「スシ・ポリス派遣」計画に米メディア反発 和食「認」マークに「待った」
「正しい和食」認証制度に米メディア猛反発

このニュース自体、冗談かと思うかのようなもので、しかもニュースで流れているのが産経系ばっかりで、大手新聞ではあまり見ないんですが、本気なんでしょうか、農水省さん? 「農水省が認証制度の創設に向けて有識者会議を設置。先月下旬に初会合を開いた。今後「格付け方式」とするか、「お墨付き」を与える形にするかなど認証の在り方について議論を詰め、来年2月に提言をまとめる予定。平成19年度からの制度導入を目指している」って、もちろん冗談ですよね?

本気だとしたら狂ってるよね。

日本は常に外圧で近代の節目節目を迎えた国だからなのか、どうも大衆に強固な政治意識が弱くて。ほっといたら日本の大衆はおもしろい、パワフルなものを作るし実際つくってきたわけだけれども、しかし自分らが日本の文化を支えているという意識が弱い。このあたりを育てるべきなのがリベラリストなのだけれども、日本では左翼の動きがいびつだったために、ちゃんとしたリベラリスト思想が育まれなかった。江戸時代的な、泡沫的でアナーキーなリベラリズムは浸透したと思うけど、政治レベルでそのあたりの意識がきっちり確立しなかった。

そうこうしているうちに、時代の趨勢で右派が台頭して、現在の「にわか新保守主義」独走状態があるわけですが、これがねえ…ほんとトホホという感じで。「世界でリーダーシップの取れる強く誇り高い日本」を打ち立てるために、国会での数の論理の後ろ盾で右派が出した結論が、「結局国民は政府がちゃんと指導してしつけなきゃいかんのだ」ということなんだよね。教育基本法の改正案でも、とにかく「国が決めます、国がなんとかします、国の言うとおりにしてください」…って、「国」言うな、「政府」ってはっきり言えや!と思うのですが。

それはともかく、これははっきりと典型的な「お上に従え」的日本文化なわけですよ。でね、この「お上に従え」方式でやってたから日本国民は今イチ主体性のないふにゃふにゃな存在だったわけで。「創造性」や「気骨」を育てようとするなら、国民が自らの力で土台をつくりあげる、そういう環境をつくらなければならないはずなのに、逆行して「お上が決めるからそれに従うように!」路線に戻ってどうすんの?

アメリカの「トップダウン方式」のマネで始まった日本式の「トップダウン方式」礼賛。どうも見ていてなんか勘違いっぽいのよね。アメリカのトップダウン方式は、あくまで、下にいる側の自主性、創造性が絶対的な前提になっていて、そのなかからトップが取捨選択して正しい判断を素早く下して競争力をつけるということであるのに、日本のトップダウンって、トップが何から何まで全部決めて、ダウンはトップの言う通りにやってたらいいんだみたいな感じで、おいおい、それって昔ながらの日本方式やろが!と突っ込みを入れたくなる。

いや、実際ね、教育現場なんてひどいもんよ。国がああせえこうせえ、やらないと罰があるぞなどと絶え間なくおせっかいな「改革」をごりおししてくるもんだから、教育の上層部は、お上(文科省)の言うレールを踏み外さないように踏み外さないように、それに神経をとがらせ、お上からやり方を注意されたら「ははあ、ただちに善処します」と、平伏。教育組織の末端にいる人間からしてみれば、「こりゃ日本の教育は駄目だな」とうそぶきたくもなります。ほんとに日本の「お上」は「下」を育てるのがヘタクソだね。口だしてしつければ良くなると思ってやがる。

で、「正しい和食 認証制度」も発想がまったく同じだということにオレはあきれかえったわけ。「【正しい】ものが間違った道にそれようとしている、指導せねば!」という発想ね。それが海外、というか主にアメリカ(アメリカは日本食大好きやからね)のメディアが猛反発している…と上記の産経の報道にあるけど、反発というか、半分ぐらいは嘲笑されてるんでしょ。「教育的指導だ!」と口泡とばして、そりゃ田舎もんの発想だってさ。

文化はお上が指導してつくるもんじゃないんだよ。文化は生き物、常に変質し、ゴミとともに輝かしく新しいモノが生み出されているんだよ。「正しい文化、正しい文化」と、「正しい」の意味も良く考えないで言っている連中にはわからんだろうが。