国内自動車販売、4年連続前年割れ

もう「車」というカテゴリーを作った方がいいなじゃないかと思わないでもないけれども、そのうち車熱も冷めるかもしれないし。

国内自動車販売、4年連続前年割れ 08年見通し
 日本自動車工業会の張富士夫会長(トヨタ自動車会長)は20日、08年暦年の国内自動車販売台数(軽自動車を含む)について、07年の販売見通し(538万3700台)より1.2%減の531万9400台と、4年連続の前年割れになるとの見通しを発表した。
 07年後半から各社が新型車を積極的に発売したことから、08年の普通乗用車の販売は前年を5万台程度上回る見込みだ。一方、軽乗用車は同0.9%減の144万台で2年連続の前年割れとなる見通し。原油高による物価上昇などが響き、08年も消費の大幅な伸びは見込めそうにないとしている。
 張会長は「08年は国内市場の活性化が喫緊の最優先課題。魅力ある商品投入で少しでも台数を増やしたい」と述べた。

http://www.asahi.com/business/update/1220/TKY200712200358.html

まあ、乗用車が増えて軽自動車が減って、総合して前年度割れ見込みということだから、そんなに悪くない気もするけど、業界は危機感を持っているようです。これに対し、江草さんが「若者が買えるクルマを出しやがれ! 」と吠えています。いわく、「小型・小排気量のカッコいいデートカーがなくなって若者が車離れを起こしたから売り上げが減るんだ」とのこと。デートカーという考えには必ずしも賛同できないけれども(車でモテるという幻想?は80年代で終わってると思うし)、近年の国産車のラインナップに疑問を感じるというのには同意です。

もちろん、よく言われる「若者の車離れ」は本当なのか、若者人口が減っているだけじゃないのかという気もしないでもありませんが、そのあたりはシロウトなのであまり深く考えないことにして、確かに今の国産車のラインナップはどうにかならないのかと思います。どいつもこいつも、居住空間の広さとか、シートの数とか、フラットシートになるかとか、どれだけ荷物を積めるかとか、そんなんばっかり。ようするにミニバンとかプチミニバンとかミニバンSUVとか、ステーションワゴンとか、そんなんばっか。別にミニバンが悪いとは思わないけど、そればっかで、江草さんが言うように、クーペが絶滅してしまっている状況はどうなのよ?

もちろん、売れるからこそミニバン系車がたくさん出てくるんでしょうが、この「マーケットに合わせて車種ラインナップをフレキシブルに変更する」というマーケット至上主義こそが「若者の車離れ」(というものがあるとすれば)に繋がっている気がするんですよね。それが顕著なのが1.6L以下のコンパクトカー・セグメントで、ここにはフィット、ヴィッツデミオという「小さな巨人」が鎮座していて、その他の選択肢が非常に薄い。フィットやヴィッツというのは「究極の経済車」で、「コンパクト」「燃費」「居住空間の広さ」「積載性」を最大限に満たすように熾烈なしのぎを削った結果、なんだかダンゴ虫のようなずんぐりむっくりカーになってしまった。

↓熾烈な「居住性」競争の結果、プチミニバン化したヴィッツ
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↓もともと「居住性」で大ヒットし、さらにプチミニバン化が進行したフィット
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これらが悪いと言っているんじゃないですよ。これらがバカ売れした結果、こういうプチミニバン以外の選択肢があっさり切り捨てられてしまったということが、なんだかなあと思うわけです。

もともとトヨタはマーケティング至上主義で有名で、とにかくシェアを取るのが第一、市場のニーズにあわせて変化自在にアメーバのように車種ラインナップを変化させ続け、たとえヒットした車種でも名車といわれる車種でも人気がなくなれば容赦なく切り捨てる。そしてこのトヨタ主義は他のメーカーにも広がり、その結果、1.6L以下のコンパクトカーは、大量に売れるフィットやヴィッツのようなプチミニバン以外は存在しないに等しい不毛の地になったわけです。

しかし、結局消費者のニーズに究極的に答えることによって、逆にメーカーは自らの首を締めているのではないか。だってさ、本来エントリー車となるべきコンパクトカーのラインナップに、フィットやヴィッツしかないんだよ。いかにもロマンがなさすぎるというか。「こういう車が一番経済的なんだよ」と提示し続けることによって、結局「車持たない方が実は経済的なんじゃ?」と気付かせてしまっているというか。

「経済性」や「総合的出来」といった尺度では計れない思想や哲学をもった車をエントリーレベルに置かないと、若者は車に夢を持てないんじゃないかなあと思う。

もっとも、「車に夢を」という考え自体がもうすでに時代に合ってないのかもしれないけど。