ストレート・ストーリー (1999) ★★★

監督:David Lynch

デイビッド・リンチの2年ぶりの監督作は、前作「ロスト・ハイウェイ」がリンチの神秘主義が爆発した不条理作品だったの対して、えらくほのぼのしたドラマ。というか、こんなにストレートに「ふつう」のドラマというのはたぶん初めてだろう。足腰の悪いガンコ爺さんが芝刈り機に乗って旅をするという、実話をもとにした話だが、特に起伏もなく話は終始する。無謀な旅なのに、そしてこのせちがらい世の中なのに(特に、リンチは「郊外の狂気」を描くのが得意なのを考えあわせると)、行く先々で暖かい出会いがあるのは一種のリンチ流の「神秘主義」と考えられないこともない(考え過ぎ?)。

でも、これが実話でなくて、ストーリーをリンチ流に脚色できるんだったら、だいぶ違う感じの、そしてもっと興味深い話になった気がする。まあ、このお爺ちゃんのチャーミングさだけで最後まで押し通す流儀も悪くないけど。 (06/23/2000)