桜桃の味;アメリカ題「The Taste of Cherry」 (1997) ★★★★

監督:Abbas Kiarostami

不勉強どえすが、これがキアロスタミ初体験。イラン映画ということで、泥臭いのを予想していたのだが、逆で、むしろずいぶんとハイカラな映画監督だなという印象をもった。(おそらく金持ちの)男が、テヘラン郊外の山で睡眠薬での自殺を計画し、それを助けるひとをさがすというストーリー。ストーリー的には非常に単純なのだが、おそらく複雑と思われるストーリーの背景や、ストーリーが示唆する複雑なテーマなどは、ほとんど語られることがなく、非常に寡黙な映画。テヘラン郊外の風景と、労働者階級のひとびとの顔の皺、そして能面のように無表情な主人公の男、それらがあわさって何かを語りかけているのだ、といえるかもしれない。って、陳腐な言葉ですみません。

しかし、観る者の感情移入を排斥するかのようなラストの突き放し方はすごいというか、ちょっとびっくり。そこで流れるジャズ・ブルースがいい。そこにハイカラさを感じましたです。 (07/24/2000)