DRMなしのオンライン配信を模索する動き

前回のエントリのコメントで情報をいただいたのですが、EMIがDRM配信の道を探っているという動きがあるようです。ジョブスが「Thoughts on Music」でDRM放棄を提言したのに合わせて、報道もでてきました。

[WSJ] EMI、「全曲DRMなし」での販売を検討

この背景には、以下のようなことがあると記事では書かれています。

 一般には、デジタルダウンロード販売の継続的な成長が、音楽業界が中核製品のCDの売り上げが減少する中で生き残るためのカギになると見られている。CD売り上げが減り始めたのは2000年、初代Napsterにより、オンラインで無料デジタル楽曲を簡単に入手できるようになったころだった。CD売り上げは米国の音楽売り上げの約85%を占めるが、今年だけで、2006年の同じ時期から20%減少した(Nielsen SoundScan調べ)。
 デジタル音楽の売り上げは上昇し続けているが、ここ数カ月は成長率が鈍化しており、CD売り上げの減少ペースについて行けていない。これが音楽業界の懸念の元だ。

興味深いですね。「オンライン配信はCD売り上げの敵だ」という考え方から「オンライン配信だって立派な売り上げの一つなんだ」という考え方へ転換しつつあるのならば結構なことです。EMIは、大手レコード会社の中ではオンライン配信にオープンな考え方を持っていて好感もてますね。日本ではCCCD導入の先陣を切って顰蹙をかったりもしましたが、「CDでエンコできないかわりにオンライン配信を拡大しますよ」という姿勢があったことは姿勢としては矛盾しておらず、それなりに評価出来ます。

ちなみに、この「DRMなし配信」の動きは以前からあったようですね。

(9/20/2006) 米Yahoo!、iPod再生可能なDRMなしフルアルバム発売(Hollywood Records)
(12/6/2006)[WSJ] 「DRMなしMP3」での販売に踏み込むレコード会社 (1/2) (EMI傘下のBlue Note)

ジョブスの発言によりこのニュースが再燃したという形と言えるかもしれません。

レコード会社からすれば、デジタル音楽配信が広がる中でiTunes Storeの独占力が強まって、販売網をApple一社に握られることを恐れているということもあるかと思います。しかも相手がAppleとなると交渉も一筋縄ではいかないでしょうし、だったらDRM自体をなくしてしまえばiTunes Storeの独占を防げるかもしれない…というような思惑もあるかもしれませんね。もしかしたら。

AppleDRMオープン化か、はたまたDRM廃止か、どちらにしても、音楽ファン*1にとっては良い話でしょう。というより、流通の仕組みが合法的な音楽の楽しみ方を阻害するのは文化のあり方としてそもそも間違っているのです。

*1:当サイトでは、音楽文化を楽しむ者を「消費者」と呼ぶことを拒否します。音楽クリエイターが聴衆という「土壌」の上で育っていくのが音楽文化だからです。「消費者」ではなく「音楽ファン」または「聴衆」という言葉を使うのが適当でしょう。