「持ち込み可の学期末テストを受けるだけで良い」のは楽勝なのか?

2008-11-03 - 大学に関する話題日記」さん経由で知ったニュース…というか記事です。

大学単位取得事情「詩を提出」「出席1/3」でOKの例も(アメーバニュース)

 某国立大学の学生によると、彼の大学で通常の単位は「出席点+テスト」や「レポート」でもらえるが、時にあまりに簡単過ぎる評価方法もある。

 それは「持ち込み可の学期末テストを受けるだけで良い」「学期末に詩を書いて提出するだけで良い(出席は取らない)」「(全15回の講義のうち)出席を5回するだけで良い」など。全く講義内容を身につけることなく単位が取れてしまう講義も存在するのだ。

http://news.ameba.jp/special/2008/11/19240.html

全文を読むとえらく尻すぼみなこの記事ですが,おいおいと思ったのが「あまりに簡単過ぎる評価方法」に「持ち込み可の学期末テストを受けるだけで良い」が含まれていること。学生で誤解している者も多いけど,「持ち込み可」が「持ち込み不可」より簡単というのは間違った考えです。

問題を作る側からすると,「持ち込み不可」にすると,まず用語を説明させる問題が出せる。用語説明なんて覚えてくればできるんだからアホでも解けます。また,あまり高度な問題を出すと60点を切る者が続出するので,あまり難しくできない。ぼくは「授業中にやったのと同じ問題は出さない」というポリシーがあり,試験には用語説明問題を除いて応用を出すのですが,同時に,ぼくには「試験の点数には下駄をはかせない」というポリシーがあるので,持ち込み不可の場合,応用問題といっても授業中に取り上げたものをほんのちょっといじった程度にしかできません。つまり難しい問題は出せないということです。

しかし,「持ち込み可」にすると,まず用語を問うような問題は出せない。当たり前です。写経じゃないんだから,持ち込んだノートやらコピーやらを写すだけで点をやることはできません。また,手元にノートやらノートのコピーがあるのだから,「授業中にやった問題をちょっとだけひねった程度」の問題は出せません。ですから,自然と「持ち込み可」の問題は難易度が高くなります。ですから,「持ち込み可」だと単位をとりやすいというのは大いなる勘違いなわけです。(ただし,持ち込み可だと大失敗をする危険性が減るのは事実です。)

また,上の記事では「出席点+テスト」と対比させて「持ち込み可の学期末テストを受けるだけで良いのは簡単すぎる」と言っているところから見ると,どうやら筆者は「出席を考慮しない」=「簡単」という考えを持っているようです。しかしこれも巨大な間違いです。まともな先生なら誰でもそうでしょうが,ぼくは試験の点数に極力下駄をはかせることはしません。ですから,60点を切ったら不可ということですが,ぼくの考えでは,「60点を切るということは授業の40%以上を理解していないということなのだから単位を与えるには値しない」のであり,これは至極当たり前のことだと思っています。実際は59点とか58点ぐらいなら大目に見て通しますが,それより低いと落としますね。

大人数講義ではこのような成績評価システムを取っているので,授業評価アンケートでは毎年「出席を取って欲しい」という要望が学生から出ます。そうです。「出席を取る」というのは,試験の点数が悪かったときの保険になるので,学生にとって有利なのです。だからこそ「出席点を考慮してほしい」という要望が出る訳です。

しかしぼくは大人数クラスで出席を取るつもりはさらさらありません。出席を取るのは時間の無駄だし,単位というのは一種の「資格」なわけですから,いくら授業に出ていても内容を理解できていないなら単位を出すわけにはいきません。逆に授業に出ていなくても,自習だけで試験が出来るのならば,内容が一応理解できているということなので,単位を出しても構わないと考えます。なるべく授業に出ている人に有利な試験問題を作るように心がけていますが,中には頭が良くて授業にでなくても試験に通ってしまう学生もいます。これはしょうがないというか,持って生まれた頭に感謝して奢らず人生を歩んで欲しいと思うだけです。

話がズレましたが,とりあえず「持ち込み可の学期末テストを受けるだけで良い」=「簡単」という馬鹿なことはありません。まともじゃない,テキトーな授業ならば「持ち込み可の学期末テストを受けるだけで良い」=「簡単」なのかもしれませんが,テキトーな授業というのはどんな評価法でもテキトーなものなので,持ち込み云々は関係ないでしょう。