アメリカン・スプレンダー (2003) ★★★★★

American Splendor
director: Shari Springer Berman, Robert Pulcini
screenwriter: Shari Springer Berman, Robert Pulcini

アメリカン・スプレンダー [DVD] なぜかこの映画はほろりとくる。この映画は封切りのときアメリカで劇場で観てほろりと来たのだけれど、今回DVDを買って見直してみて、やっぱり最後は、初回以上にぽろぽろ涙が出た。いや、言っておきますが、この映画はお涙頂戴映画じゃないんですよ。たしかにセンチメンタルになる要素はあるけれども、監督はあえて極力センチメンタリズムを抑えて描いている。だからこの映画を観ても別にほろりとこないという人がたくさんいてもおかしくないし、むしろたくさんいる方が普通じゃないかと思う。でもなぜかぼくはほろりとしてしまうのですね。なぜだろう。

この映画は、病院のファイル管理係として働く、神経質かつ脅迫観念にとらわれたようなオタク男、ハーヴェイ・ピーカーが自分の日常を描いたカルト的同名漫画を映画化したもの。実際の日常を描いた漫画をさらに映画化するというのだから妙なまわりくどさがあるのだけれども、この映画ではハーヴェイ・ピーカー本人のみならず、ハーヴェイ・ピーカーが漫画の中で描く身の周りの実在人物までが登場する半ドキュメンタリーとなっているのだから、そのあたり、不思議な感じ。というか、この映画の監督はドキュメンタリー出身らしいけど、だからそのあたりのバランスがうまいんだろうと思う。

ストーリーは、「なんの変哲もない駄目男の日常」を回想するだけなんだけれども、実際はささやかなドラマもあって、だからたぶん最後にほろりと来るんだろうな。なんだかよく分析できない映画だけれども、そして決して「傑作」とかそういうもてはやされ方は似合わない小品だけれども、そんな「ささやかさ」がハーヴェイ・ピーカーにぴったりと合っているのだと思う。ピーカー本人は「これを素敵なハッピーエンディングだなんて思わないでくれよ」とナレーションするのだけれど、その言葉とは裏腹に、なぜか心が暖まる一品です。

どうでもいいけどのこの日本版のDVDのジャケは素敵じゃないな‥。こっちのオリジナルのアメリカ版の方がずっといい。→f:id:ultravisitor:20050324010311:image