藤沢周平原作。ということでいつものの藤沢周平節。組織への忠誠、組織の理不尽、そして個人の問題とのあいだでうじうじと悩むサラリーマン的剣士が描かれている。今回は、お上の放蕩と民の困窮という白土三平的ネタの展開で、隠し剣である「必死剣鳥刺し」も、どことなく白土三平っぽかった。「必殺剣」ではなく「必死剣」であるところがミソ。
藤沢周平ものではオレは「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督)が好きで、それに比べると「必死剣鳥刺し」はドラマが少々単調だが、最後の殺陣はこちらの方がすごい。何より(まったく本質からはずれるが)「鳥刺し」という名前が素晴らしい。映画館で「鳥刺し二枚」と居酒屋みたいな注文ができるのは大変新鮮であった。