ねじ式 (1998) ★★

director: 石井輝男
screenwriter: 石井輝男

微妙です。なんてゆうか、都会的な寺山修司というか。寺山から田舎を取ったらナンセンスしか残らないんじゃないかという気がしないでもないですが、まあ、実際そういう映画なんじゃないかと。

石井輝男監督、浅野忠信主演のつげ義春の有名漫画の映画化‥ですが、前半3分の2はつげの私小説漫画路線をなぞっています。つげの漫画というのは、リアリズムとシュールなファンタジーを自由に行き来するところがもちあじだと思うのですが、この映画には、私小説的エピソードも含めてリアリズムはほとんどない。よって、ただのファンタジーになっています。しかも意外なことに濃くない。ライト・ファンタジー。「つまんね‥」と思う瞬間も多々ある反面、どこか軽妙なテンポと、物語に飽きそうになるとタイミングよく出てくる乳にひきずられてけっこう観せられてしまう。ナースの藤森夕子(元CCガールズ)の顔にいきおいよく尿が飛ぶところや、旅館のおかみとの強姦まがいのからみのシーンで荒くれる海の波しぶきが重なるところは、あれは笑うところですよね?

後半3分の1は、いよいよ「ねじ式」の映像リメイク。「メメクラゲ」「テッテ的」「ポキン金太郎」など有名な台詞、場面が次々にでてくるとうれしくなってしまいます。よっ!千両役者!とおひねりの一つでも投げたくなりますね。あいかわらず軽いノリなので、なんかパロディっぽく感じるのですが、まあ、これはこれでおもしろかった。機関車がミニチュアなのはどうかと思ったが。

しかし、あんだけ「ねじ式」を原作どおりになぞっておきながら、クライマックスが原作と無関係な暗黒舞踏なのはどういうことだ。なんで三途の河を渡るモーターボートじゃないのだ! クレジットロールとともに延々続くありきたりな暗黒舞踏を観ながらだんだん怒りがこみあげてきた。ラストがモーターボートなら★★★以上の評価だった。