霊能番組ブームに懸念 悪質商法の広がり背景
若い女性などに人気の「スピリチュアル」への懸念が各方面で高まっている。「霊と交信できる」というタレントの出演番組が高視聴率をとり、「ヒーリング」「パワースポット」といった特集が誌面をにぎわす。陰で、悪質な霊感商法の被害が拡大。関係者からは、スピリチュアルブームを作り出しているメディアの責任論も噴出している。
■「倫理に反す」
(中略)
番組は昨年7月放送の「27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」。ドッキリ手法で出演させた一般人の女性に「スピリチュアルカウンセラー」の江原啓之氏が対面し、彼女の亡き父親の「声」を伝える内容だった。
検証委の「意見」は「(江原氏の)PRに女性を利用」「『あるある問題』の教訓が生かされず、面白さ第一の演出を繰り返している」と指摘。そのうえで、「科学的根拠の乏しい題材の取り扱いに慎重さが求められる」と自制を求めた。
「スピリチュアル」は「超自然的」「霊的」などの意味。霊視や運勢鑑定、「オーラ」などを扱う番組に対しては、メディア界の「外」からも根強い批判があった。BPOに届いた視聴者の声はこの5年で千件に及ぶ。
昨年末に各地で強制捜査が入った「神世界」事件。ヒーリングサロンなどを窓口にした「除霊・祈祷(きとう)」商法の被害総額は100億円とも言われるが、被害対策弁護団は会見で「ここまで大規模に展開できた背景に、『霊界と交信できる』といった行為を肯定的に放送し続けたマスコミによる風潮の影響が明らか」とメディアに矛先を向けた。
全国霊感商法対策弁護士連絡会は昨年2月、民放キー局などに「占師や霊能師が未来やオーラを断定的に述べ、出演者がそれを頭から信じて感激する番組」を是正するよう要望書を出していた。
(中略)
■高視聴率、批判しにくく
(中略)
「近頃の番組は、占いや霊視を前面に出さず人生相談的要素を強くし、抵抗感を減らしている。ここまで数字(視聴率)をとっていると、局内ではなかなか批判できない」。ある局のディレクターは明かす。
(中略)
ニューエイジやオカルトブームと違い、宗教色を払拭(ふっしょく)した「オープンさ」が特徴、と精神科医で帝塚山学院大教授の香山リカさんは言う。「オーラを信じているとふつうに話す学生が増えた。救われる人がいるのに何が悪い、批判する人は非人間的でやぼ、という雰囲気が広がっている」
http://www.asahi.com/national/update/0205/TKY200802040389.html
ちなみに民放連の放送基準では以下の項目があるそうです。
第7章 宗教
(41)宗教を取り上げる際は、客観的事実を無視したり科学を否定する内容にならないよう留意する
第8章 表現上の配慮
(53)迷信は肯定的に取り扱わない
(54)占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない
この記事を読んで思ったこと。視聴率ありきでスピリチュアルを煽るいい加減な放送局の責任論も当然追求されてしかるべきですが、それはおいておいて、それより気になるのは最近の10代・20代(もしかしたら30代前半も?)の人に「癒しと感動」至上主義とでも言うべき姿勢が見られるような気がすることです。例えば学生に「どんな本(あるいは映画)が好き?」と聞くと「感動できる本(あるいは映画)が好きです!」と答える。こういう無邪気な姿勢は、70年代のしらけ世代、80年代の新人類の世代にはなかったものじゃないかなあと思いますね。「恋空」がヒットするのもこういう「感動できればなんでもいい」という姿勢からか。(それは言い過ぎか)
また超常現象についていえば、従来は恐怖をあおるものが中心でしたが、最近は「超越した存在がひきおこす神秘現象」にシフトしている気がします。「沖縄で撮られた自然の神秘写真」というフェイク画像がチェーンメールでまわっているともいいます。それに対する様々なブログでのリアクションを見ると「癒されますね♪ 真偽はともかく、信じてみたい☆」というリアクションが多いようで(あくまで印象論にすぎませんが)、とにかく「本当かどうかは二の次で、自分が癒されればそれで良いじゃないか」という気質があるように思います。引用記事の最後の「救われる人がいるのに何が悪い、批判する人は非人間的でやぼ、という雰囲気が広がっている」という言葉はまさにぼくの印象とぴったり一致します。
ぼくの音楽系サイトの方での年間ヒットチャートを大人買いするコーナーでは、最近のヒット曲に「励ましラップ」が多いことに辟易していると何度も書きましたが、それとも共通しているようで、そんなに癒されたいのか? そんなに励まされたいのか? そんなに「不思議な神秘の力」に力づけられたいのか? と思ってしまいますね。何がそんなに不安なんでしょうか。そっちの方が謎です。
あとマイナスイオンなどの似非化学とかね。情報過多になると情報の波に溺れそうになって逆に不安になるんでしょうか。情報社会の神秘主義。不思議です。