民主党政権になって、予想以上にバンバンと改革が断行されている(される見込み)なので、ちょっとびっくりですが、下の決断は手放しで喜べますね。
教員免許の更新制、10年度限り 文科省方針
教員を続けるために10年に1度大学などで講習を受け修了することを義務づけている教員免許更新制をめぐり、文部科学省の政務三役は13日、10年度限りで廃止する方針を固めた。制度は今春始まったばかりだが、現場にはかねて「教員としての技量向上に効果があるかどうかは不透明」「ただでさえ忙しい教員がさらに疲弊する」という批判がある。文科省が同日開いた有識者との会合でも批判的な意見が強く、制度を続ける必要性がないという判断を固めた。
http://www.asahi.com/politics/update/1014/TKY200910130370.html
日本の教育行政って本当にどうしようもなくて、理念や理想だけはご立派で肝心の内容はおざなり、制度を決めるだけ決めてあとは現場に丸投げして放置、というパターンが多いんですよね。その最たるものが、「大学院重点化」構想。最近では、丸投げ度は低いですが、「法科大学院」構想。そして、この「教員免許更新制」。
安部の教育なんたら会議というド素人集団は、ほんとにロクな提案をしませんでしたが、実現にこぎつけてしまったこの「教員免許更新制」もほんとヒドイものでありました。なにがヒドイって、内容がない。免許更新のために30時間の講習を義務づけるとあるけれども、この講習が大学に丸投げ。講習はいちおう文科省が認定するとあるけれども、実質的には、教職課程のある大学ならば、教育にからめた内容だと言えばほとんどフリーパスです。そりゃそうだ、文科省が出向いていちいち内容チェックなんかできないもんね。教える人は教育の専門家じゃなくてもオーケー。つまり、教育よりの内容とはいえ、普通の大学の講義と大差ない講習が相当数あるわけです。それを30時間受けたところで、10年間教鞭とっているプロの中高教員の質があがるんですか? 実効が疑わしいこの制度のために、中高教員も、講座を開く大学教員にも、ただでさえ忙しいのに余計な負担が増えるというわけです。そして、日本の教育も研究もまたレベルが下がる、と。
このように、制度だけぶちたてて、内容は現場まかせ。現場の負担だけは増えて、効果は不明。それが日本の教育行政の典型像であります。まあ、多くの若い人材の人生を狂わせ、日本の研究レベルにも影を落としている「大学院重点化構想」に比べれば、「教員免許更新制」は、まだかわいいものですが。
とまれ、こんな意味のない制度がなくなるのはたいへん良いことです。
もう一つ、このニュース。
教育実習1年・大学院2年必修を検討 教員養成で文科省
教員養成をめぐり、文部科学省の政務三役は、大学の学部4年間だけでなく大学院の2年間も必修とし、修士号を免許取得の条件とする「教員養成課程6年制」を導入する方向で検討を始めた。現在は2〜4週間の教育実習についても1年間に延ばす考えで、子どもと向き合う経験を増やし、よりていねいに教員を養成する方針だ。
文科省の政務三役は、10年に1度、現役教員に大学などで講習を受けることを義務づける教員免許更新制を10年度限りで廃止する方針を固めており、教員養成の6年制化はそれに代わる教員の質向上の手だてと位置づけている。
(中略)
ただ、6年制の実現に向けては、大学院側の受け入れ態勢が整うか、1年間にわたる教育実習の受け入れ先が確保できるかという問題があり、相当の準備期間が必要になるとみられる。
http://www.asahi.com/national/update/1014/TKY200910140283.html
うーん、微妙です。
まず、修士号必修。今、日本の大学院は競争率が下がって(つまり定員充足が困難で)崩壊寸前の危機的な状況ですので、教員免許が修士必須になり、その「修士」の内容が柔軟に規定されるならば、大喜びする大学はたくさんあると思います(うちも含めて)。また、とにかく日本は就職戦線を就職あっせん業界にコントロールされている関係もあり、院卒の社会的地位があまりに低いので、修士必修というのは高等教育の再評価のきっかけになるのではないかという淡い(他力本願な)期待もあり、賛成したい気分です。まあ、もしかしたら教職をめざす学生当人たちにとっては迷惑な動きかもしれませんが…。ただ、最近の高校は、教員が修士号を取ることを積極的に推しているとも聞きますし、そんなにまとはずれな流れではないように感じます。
しかし! 「1年間にわたる教育実習」はないわー。実習なんてそんな長くやるもんでもないでしょ。受け入れる中高も超迷惑なのでは? それ以前に、大学院に在籍しながら1年間実習するって、要するにその間休学するってこと? 意味わからんわ。はっきりいって、今の教育実習も大学教育の上ではかなりの問題なのに。だって、多くの大学では一学期15週でやっているわけですよ。15週のうち4週も休まれたらたまらんですよ。ぼくなんて、授業によっては「5回休んだら不可」って決めているのに、4回も実習で休まれたら教育できません。いわんや1年実習って…。まあ、もしかしたら大学または大学院卒業後に1年間修行するという意味かもしれんけど、そんな、学籍ない状態で1年間も無休でインターンやらせるなんて無茶でしょ。というわけで、こっちの案は反対です。てか、実現しようがないように思いますけど。
と、原稿の締め切り迫っているのに逃避でぐだぐだ書いてしまいました。ひぃぃぃ。