Dr.パルナサスの鏡 (2009) ★★★★

監督:テリー・ギリアム、主演:ヒース・レジャークリストファー・プラマーリリー・コール

なんと、「ダーク・ナイト」以降のヒース・レジャーの遺作があった!「ダーク・ナイト」自体、レジャーの死後の公開だったのだから、びっくりであります。それがこのテリー・ギリアム作品。ドキュメンタリー「ロスト・イン・ラ・マンチャ」で世界一ツキのない監督としての名を欲しいままにしたギリアムだが、撮影途中でヒース・レジャーが急逝したときはきっと、悲しみと同時に「またポシャるの?」と頭を抱えたに違いない。しかし、「ドンキホーテ」の映画化がぽしゃった(「ラマンチャの男」参照)と違い、ここでよくぞ踏ん張った。ここ10年ほど低調だったギリアムの、「12モンキーズ」(1995)以来の久々の復活だと言ってようだろう。基本的に「バロン」(1989)路線のギリアム印のファンタジーで、驚くほど「バロン」との共通性が観られるが、シンプルな活劇だった「バロン」と違い、「パルナサス」は家族、恋、虚栄、欲といった我々の日常に近いテーマの機微を扱っているところが良い。マイナスは、CGに頼りすぎているところと、芸風がティム・バートンとかぶりすぎてしまっているところだろうか。敗者復活をねらっているという「ドンキホーテ」が楽しみ。