マッハ!!!!!!!! (2003) ★★★★

director: プラッチャーヤー・ピンゲーオ (Prachya Pinkaew)
screenwriter: スパチャイ・シティアンポーンパン (Suphachai Sithiamphian)

いやーすごかった。アクションが。実は、この映画がどこの映画かも、どんな映画かもよく知らないで借りたのですが、タイのムエタイ映画だったんですね。ムエタイ自体よく知らなかったんですが、世界でもっともルールの緩い、つまりもっとも過激な技が許される格闘技だそうで。

で、この映画でも、すごいですよ。目つぶしと金的への攻撃以外はすべて許される格闘技ですから、とりあえず必殺技は脳天または後頭部への、重力を最大限に利用した肘鉄または膝蹴り。いてーーーーっ!! これを、主演のトニー・ジャーがスタントなしで演じます。いや、ジャーは主役だから、主にやっつける側だからいいさ。やられる方はガンガン脳天に決められて、マジで何人かは半身不随になってんじゃないの?

いやもちろん、トニー・ジャーもすごいです。まさに鋼のような肉体、すさまじいまでの跳躍力で、昨今のワイヤーアクションに慣れた目を唖然とさせるようなすごいアクションを次から次へと見せてくれます。鋼の肉体と書いたけど、西洋系のマッチョ、たとえばボディビルダー出身のシュワルツネガーみたいな、風船みたいな筋肉じゃないのよね。本当に鋼鉄で出来てんじゃないかというような無敵の肉体。そして観ていて「うおおおっ」と思わず声が出てしまうような破壊力のあるアクション。トニー・ジャージャッキー・チェンを尊敬しているらしいですが、ジャッキー・チェンのハイパーアクションと、ブルース・リーのデンジャラスな破壊力を合わせもった素晴しいアクションです。

ただ、この映画には欠点もいろいろありまして。ストーリーが超ありきたりだったり、三輪タクシーのカーチェイスが退屈だったり、音楽の使い方が単調だったり。あと、いくらトニー・ジャーのアクションが素晴しいからといって、見せ場をいちいちカメラアングルを変えてリピートするのはやめてほしい。いやまあ、リピートのたびに「おお、やっぱりすごいな」と感心はするんですが、同時に、「ほう、なるほどね」と、妙に冷静になってしまったりするわけですよ。リピートなしで「えっ、今のアクション何?何?」ぐらいに観客に思わすほうがいいと思うんだけどな。

ストーリーはありきたりだけど、キャラはけっこうよかった。主演のジャーは演技力はそれほどでもないけど、「信心深い田舎の青年」というキャラにはぴったりで、映画をみていて素直に応援したくなったし、ムエ役の女の子は演技はかなり疑問符だったもののボーイッシュな存在感はけっこうよかったし、南伸坊そっくりのハン・レイもコミックリリーフとしてはまっていた。悪の黒幕も憎たらしくてよかった(←しかしこいつ、ずっと声帯振動機をつかってしゃべってたのに最後で素で声がでていたのはなんでだ?)。

欠点を探せばきりないけど、とにかくアクションは最高。「エインタテイメントなんだからワイヤーもありっしょ」という昨今の格闘技映画のトレンドを根底から覆すようなすごさです。トニー・ジャーの今後に注目したいところです。