奇跡の丘 (1964) ★★★★

監督:Pier Paolo Pasolini

パゾリーニ長編3作目。無神論者のパゾリーニがあえて聖マタイ伝を忠実に映画化したもの。パゾリーニの作品でも一般的な評価が非常に高い作品のようです。ここでも素人キャストが貫かれているのだが、この方法論がいかんなく発揮されている作品。台詞はイエス・キリストの説教ぐらいのもので、あとは、素人の人々の顔にきざみこまれた生活を寡黙に追ったカットがこれでもかと連続する。聖書の映画化でありながら、生活する人々のドキュメンタリーとなっているのがすごい。

ただ、聖書の映画化なのでストーリーは当然のことながら荒唐無稽(というとキリスト教徒のかたにおこられるか)、そのあたりどうも醒めてしまう。キリストを反権力革命家にみたてたマルクス主義的映画という解釈もできるとAMGに書いてあったけど、いわれてみればそうかも? でもみてるときはそんなことちっともわかりませんでした。ぼくには、あくまでリアルな「人々」と、荒唐無稽な宗教ストーリーの非リアルさとの対比が気になるのみで。 (06/18/2000)