インランド・エンパイア (2007) 二回目 ★★★

インランド・エンパイアのDVDを買ったので観た。おお、二度目はけっこう分かったぞ。一度目観たときは「ロスト・ハイウェイ」を超えた抽象度と思ったが、実は大枠のプロットは「ロスト・ハイウェイ」どころか「マルホランド・ドライブ」よりシンプルかも。そのプロットとは…呪われたポーランド映画「47」の主演女優「ロスト・ガール」は殺されたのだが、「ファントム」と呼ばれる謎の男によってこの世とあの世の狭間に幽閉されてしまっている。時を超えて同映画のリメイクが決まり、主演女優にローラ・ダーンが選ばれたが、「ロスト・ガール」を救おうとする一派により仕組まれて、ローラ・ダーンは知らず知らずのうちに「ロスト・ガール」の運命を追体験し、そして最後には「ファントム」を打倒して、「ロスト・ガール」を成仏させる。そういうシンプルなファンタジーなのだ。まあ、プロットが解ったといっても大枠だけで、細部は良く分からないのだが。

前回★★★★つけて、今回★★★なのは、現在、しょぼいテレビとしょぼい音声機器しかない場所にいるということで、映画を十分楽しめなかったから。この環境下だとどうしてもこの映画の欠点の方が目立ってしまう。前回も書いたけど、やはりデジタルビデオカメラ撮りになって映像美が後退したのは返す返すも残念。構成や編集には、大手資本のプレッシャーなしで撮られたという自由さが感じられる反面、いつになく詰めの甘さも感じられる。また、悪役のキーマンとなる「ファントム」がもう一つ存在感が弱いのも不満。「ブルー・ベルベット」のデニス・ホッパー、「ワイルド・アット・ハート」のウィレム・デフォー、「ロスト・ハイウェイ」のロバート・ブレイク(ミステリー・マン)のような凄まじい狂気に比べると弱いのよねえ。ファントムが弱いからストーリーが解りにくくなっているという面もある。

ただ、DVDのボーナスディスクでのリンチのインタビューを観ていると心底楽しそうで、今が人生の我が春だという感じ。デジタル技術によって、資本的しがらみ・人的負担が大幅に軽減して身が軽くなり、撮影から編集までぐっと身近になったのがよっぽど嬉しいとみえる。「インダンド・エンパイア」は残念ながら、「デジタルビデオの欠点を逆手にとった表現のおもしろさ」というところには至っていないと思うが、その意味でも、過渡期・習作的な作品かもしれない。