アメリカで車を買う(後編)

アメリカでの「一年限定」の車選びの続きです。前回書かなかった話題として,「マニュアルかオートマか」ということがあります。アメリカは日本と並び世界有数の「オートマ天国」と言われていますが,個人売買の掲示板を見る限りでは,マニュアルは日本よりかなり多いという印象です。特にスポーティーグレードはマニュアルが多い。

だったら今回マニュアルで行くっきゃないでしょ!……と言いたいところなんですが,実は今回,スーパー同居人ちゃんがアメリカにて車の免許を取る「かも」しれないという事情があり,オートマを主に考えていました。スーパー同居人ちゃんはMTは絶対ムリなので。ぼく自身,車歴ではMT→AT→AT→MT→MTときているわけですが,寄る年波によってMTによる腰や左脚ひざへの負担も馬鹿にならないという状況もあり,σ(゚∀゚ )オレ的にも「そろそろATに戻ったほうがええんちゃうか」と思わないでもない,という背景もありました。

しかしそうなると逆にいろいろと車選びが難しくなります。あまり日和すぎるのは嫌だ!と思うけれども,日和った車こそオートマ中心で,日和らない(?)車こそマニュアルが多いからです。

そんな中,σ(゚∀゚ )オレが注目したのは……パイクカーです! 人気のパイクカーは球数が多いと同時に値落ちも激しいという特性があり,同じ年式・走行距離でも他の車に比べ,相場が安い傾向があります。

ということで,さあこれから個人売主にコンタクト取るぞ,何にしようか,という最終段階で急浮上してきたのがクライスラー・PTクルーザーです。

日本でもさほど珍しくない車なんで,その意味では「せっかくアメリカにいるんだから」という意味での希少感はありませんが,アメリカでヒットした車なんで球数は多い,そのわりにユーザーの満足度はさして高くない車ですので,中古市場価格が安いんです。日本でも乗れる車とはいえ,クライスラーのロゴが入ったステアリングをカリフォルニアの青空の下で運転するのは似つかわしいような気がして,そして,車を運転したことのないスーパー同居人ちゃんの練習用の車としてふさわしい気もして,「10年落ち以内,10万マイル以内,5000ドル以内」で探しました。

で,2007年式,9.3万マイル(約15万km),5000ドルのPTクルーザーが中古車ディーラーから出ているのを某大手掲示板で見たので,比較的近所だということもあり,渡米3日目に見に行きました。上述したように個人売買が狙いだったのですが,アメリカに来ていきなり個人にコンタクトを取ることに対してちょっとひるんだということと,ディーラー販売ながらも個人売買にわりに近い値付けだったということで見に行って,試乗もしました。

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まず,乗り込んで思ったのは,清々しいほどのパイクカーだなということです。ステアリングは往年のクラシックカーを彷彿とさせる大径のもの。オートマ・シフトの柄はやたらと長く,ノブは丸っこい,これもクラシック。時計はアナログ。インパネにデジタルインジケーターがあるのは今風ですが,そこに表示される情報はなんと「方角」。面白い。全体にパイクカーらしいあざとさはあるものの,アメリカで乗るんだもの,なんちゃってアメリカンに浸るのも良いではないですか。

動力性能は,まあ噂通り,非力。話によれば中身はダッジ・ネオンらしい(未確認)。ネオンより車体が大きいので,そんなに軽快には走らないのは当然でしょう。でも,耐えられないというほどでもなく。

ただ,外装はそれなりに傷があり,うーん,と思いました。いちばんひっかかったのが,一箇所サビが見られたこと。大きなマイナスです。そして何より,中古車ディーラーのオーナーと波長が合わなかった。中東系の若い人だったんですが,こっちが「タイベルとか交換した?」「記録残っている?」と質問すると,けっこうdefensive aggressiveに言い返してくる。「今すぐ記録はでてこないが,すぐそこの工場でやったから疑うならそこに聞けばわかる!」と言って工場の連絡先を渡してくる。

いやこっちは念のために聞いているんだからそんなアグレッシブに反論しなくても。

まあ向こうもアグレッシブに言っているつもりはなくてそういう言い方になってしまうだけなのかもしれません。でも,車を買う買わないは,ほとんどセールスの人との相性だと思っているから,その意味では全然波長があわず,ダメ。スーパー同居人ちゃんも「あんな人から車買いたくない」ということで見送り。

次に見に行ったのが,日本車。そう,アメリカだからこそあえて日本車もアリではないかと。ご存知の通り,北米では日本で出ていない日本車がけっこうあるんですが,その中でも特に気になったのがクーペ。日本では絶滅危惧種であるクーペが,アメリカではまだまだ健在なんです。アコードにもクーペがあるし,トヨタにもカムリ・ベースのクーペ,Solaraがある。どちらもけっこうカッコいい。

で,実は最初はスカイラインの北米版,インフィニティG35のクーペ(日本でも出ていましたが)をチェックしていたんですが,いかんせんインフィニティは中古車相場がかなり高い。2005年式10万マイルでも個人売買で平気で1万ドルする。そこで注目したのが,アルティマ・クーペ。外見はスカイライン・クーペにかなり似ているがスカイラインより安い。てか,お尻からのラインがかなりセクシー。ということで,PTクルーザーを見たあと,個人売買で相場よりちょっと安めのこれを見てきました。

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2009年式,7.1万マイル(11万km),1万900ドル。狙っていた価格よりだいぶ高いが,この年式,走行距離のアルティマ・クーペでこの値段は相場より安い。売るときも高く売れそう。しかもブルーはσ(゚∀゚ )オレが好き色。

ということで,一瞬いいなと思ったんですが,聞けば,エアバッグが開かない程度の事故歴があるとのこと。これで萎えた。ただ,アメリカでは大きな事故があると,「Title」と呼ばれる車の所有証明書にSalvageという印が付くことがあり*1,これがあるかないかでかなり売値が変わるのですが,いちおうこの車はClean Titleなのは救いか。いちおう構造ダメージおよびエアバッグ展開は報告されていません。

試乗してみると,ピンとこない。思ったほどの動力性能がないんですね。レンタカーで借りていたMazda 3のほうが全然良くエンジンが回るじゃん,と思いました。あとから分かったんですが,CVTだったんですね←運転しているときに気づけよ。だからトルコンのつもりで踏み込んでも,思ったのと違う感じだったという。

ということで,いったん保留にしました。

翌日もう1台見に行きました。ちょっと遠方だったんですが,パイクカーの王様,ニュービートルです。2005年式,10万マイル(16万km),カブリオレ,ターボ,5650ドル。

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これまたσ(゚∀゚ )オレの好きなブルーだし,非力な車とはいえ,今回はターボなのでかなーり期待して見に行きました。

待ち合わせた場所が,夜になってけっこう恐い街だったので,大丈夫かとビビリましたが,「マッチョはビートルには乗らない」という予想通り,現われたのは優しそうな中東系のクリスチャンでした。そういやアルティマのオーナーも中東系で,これで3連続中東だな。

しかし実車は,全然洗車していないので汚れすぎ。あれで洗ってピカピカだったら印象も違っただろうに。まあ,汚れは洗えば済むんだからいいとして,試乗したのですが,これまた微妙で。なんせ10年落ちのカブリオレなので,幌の音や車体のきしみ音が賑やか。動力性能もターボなのに非力。「Sモードにするとスポーティーになるんだ」と言われてSモードにしてみたけど,回転を引っ張ってエンジンがうなりを上げるだけで全然進まない(;´Д`)。加えて,低速でステアリングがめちゃ重い。アイドリングでステアリングに振動があって気になる。

うーん,青い車体にキャメルの幌という組み合わせはかなり好きなんだけどなー! スーパー同居人ちゃん,どう? と意見を聞いたところ。

「自分がいいと思うならこのボロ車でもいいよ」
「……やっぱボロだと思う?」
「うん,だってボロじゃん」

もう一つ気になったのは,オーナーに「このビートルいつ買ったの?」と聞いたところ「2ヶ月前」と答えたこと。なんで2ヶ月で売るの??!! 「もっと大きい車が欲しいから」と答えていたけど,やっぱちょっと気になるよねー。なんかあるんじゃないかと。

あと,カリフォルニアの車事情も判断に影響しました。カリフォルニアではちょっとした移動でも高速道路(無料)に乗る機会が非常に多いのですが,前も書いたように車線がやたら多く,片側4車線は普通,LAとかになると片側7車線(両側で14車線!)とかいう恐ろしい世界になるわけです。で,交通量も多い為,車線移動もかなりスリリング。そんな戦場のような高速道路だから,スイスイ運転できる車のほうがやっぱストレス少ないよなあ……と,レンタカーのMazda 3を運転していて思っていました。それほどMazda 3は軽快で快適,高速でも問題なく加速できる車だったのです。

その「静か,乗り心地がいい,エンジンも軽快」なMazda 3と,試乗したニュービートルの個体の「うるさい,遅い,重い」感じがあまりに対極的で,ちょっと引いてしまったということもあります。もしかしたらカリフォルニアのあの高速道路がなければ重さを愛情でカバーしてニュービートルを買ったかもしれません。しかし,あのビートルであの戦場を生き残るのは疲れるのではないか……。

ということで,日和って2番目にみたアルティマ・クーペに決定してしまいました!!! てか,個人売買でこれ以上いろんな人に連絡取るのがめんどくさくなって決めちゃいました!!!

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その後,いろいろ問題もあったんですがそれはまた後日……

*1:正確に言うと,修理費用が車両価値を上回った場合,保険会社が全損扱いにしていったん廃車にする。その後修理して復活した車がSalvageとして公式記録される。