続・男はつらいよ(2作目) (1969) ★★★★★

director: 山田洋次
screenwriter: 山田洋次、小林俊一、宮崎晃
madonna: 佐藤オリエ

続・男はつらいよ〈シリーズ第2作〉 [DVD] オレにとって「男はつらいよ」、5回目の観賞です。なんかね、5回目にもなると中毒になるっていいますかね、映画イントロの山本直純の「ちゃ〜ん・ちゃららら・ららら〜ん」というテーマ曲が聞こえてくるだけで、なんだか幸せな気分になれるってもんですよ。そこが渡世人の‥

‥って、寅さんが伝染ってきたよ。

で、この二作目ですが、一作目の3ヶ月後の封切りというのが信じられないぐらい、よく練られた濃い内容です。とにかく、母(ミヤコ蝶々←完璧な配役!)との初めての対面やら、他、ネタバレになるので書きませんが、他にも事件があって、エピソードとしてはオレが観た5作の中では重めですね。笑いもふんだんにあるし、ベタながらも笑えるギャグが多いので、暗いということはないのですが、ドラマ的にはやはり重い。一作目の機関銃のようなテンポや、第六作「男はつらいよ 純情篇」あたりに比べると、ちょっとテンポが悪いというか、退屈はしないんだけど、フットワークが若干鈍いかなと思ったりもしました。‥最後の段階までは。

そう、最後の最後での、おなじみのフラレの展開。今作はここの展開に重みがある。それまで気丈だったマドンナが思わず流す涙‥その裏に、様々な感情の波が手にとるように感じられて、とても切ない気持ちになりました。もちろん、それを察知してしまった寅の心情にも‥。ここにおける人間の気持ちの機微、その細やかな描写には、ガーンと来ましたよ。観ていて涙ボロボロ。

今回のマドンナは、寅さんが子供のころ通っていた英語塾の娘、演じるは佐藤オリエ。その後も舞台が多くあまり映画の出演はない人みたいです。寅さんマドンナの中では庶民派に属すると思いますが、オレが今まで観た5作品のマドンナの中ではもっともじっくりと人物が描かれています。それゆえ、最後のドラマが生きています。

で、最後観客がしんみりと涙したあとで、すかさず笑いのどんでんがえしがあって、そこにもいたく感心しました。泣きのあとの笑いは難しいですよ。でもスベってない。泣き笑いの寅さんシリーズの面目躍如というところでしょうか。

また、今回の映画は、マドンナを好演した佐藤オリエの他、東野英治郎ミヤコ蝶々山崎努など、役者陣のむせるような濃厚な存在感も特筆もの。笠智衆も、いつになく力強い。ところで、前から思っていたんだけど、小津映画で枯れた印象が強い笠智衆ですが、実は日本人離れしたルックスの男前なんですよね。今回は特にその思いを新たにしました。

いろいろ長々と焦点のさだまらない文を書いてしまいました。肝心のストーリーに触れたいのですが、触れると面白さが半減するということで触れられないのは残念。観て損はない見事な作品ですですので、皆さんも観てください。ハイ。