Futon Sofaについて

相変わらず部屋はスカスカですが,なんとなく生活も軌道に乗ってきた気がしますし,キズ補修に出していた車ももどってきたし,よく仕組みがわからなかった大学の方でもホストしてくれる先生とようやく会えて,オフィスももらえて,これから頑張りたいと思っているところです。

ところで,前回のエントリで写真を載せたうちの安ソファは,Futon(フートン),またはFuton Sofa,またはFuton Sofa Bedと呼ばれている種類のものです。

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フートンというのは,日本語の布団と語感が似ているとお思いの方も多いかと思いますが,実際のところ,語源は日本語の布団です。そうなると逆に「これのどこが布団やねん」と思いたくなるのが人情だと思います。

ということで,今日はぼくが知っている範囲で少しだけフートンについて書いてみたいと思います。

日本の居間の主役はちゃぶ台ですが,欧米の居間の主役はソファです。ソファの存在しない日本の居間はアリですが,ソファの存在しない西洋の居間はナシです。

しかしソファはいかんせん高い。特に学生のようにお金がない場合,なかなかソファに手を出しづらいでしょう。

そういったことを背景にしたかどうか分かりませんが,ある時期から,日本の布団をベースにした,Futon Sofa Bedが登場します。少なくともぼくが院生をしていた20年のアメリカではわりとポピュラーになっていました。

ちなみにFuton Sofa Bedのまえに,ふつうのSofa Bed(Sleeperとも言う)がどのようなものかといいますと,ふつうはソファの座面をひっぱると折りたたみ式のスプリングマットレスが出てくるという形になっています。

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上のビデオを見てわかるように,けっこう複雑なメカニズムです。しかしFuton Sofaはもっと単純です。

20年前主流だったフートンがどのようなものだったかと言いますと,背もたれが倒れる形式のソファフレームがあって,そのうえに,日本の布団のもっと分厚くて硬いやつを敷くというものでした。たとえば以下のようなものです。

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Futon - Wikipedia, the free encyclopedia

日本人から見るとソファっぽいですが,ソファはふつう手すりの部分もファブリックやクッションで覆ってあるので,違うことがわかります。さらに,背もたれを倒すだけでベッドになるという非常に単純な仕組みですので,安く上がるという利点があります。200ドル前後で買える。当時の学生にとってみれば,これを自分のベッドとして使い,昼は背もたれを起こしてソファにすることができるので,せまいドミトリーの部屋も有効活用できるということである程度の支持を得ていました。かくいうぼくも持っていました。

しかしここで疑問をもたれる方もいるかもしれません。「背もたれがもちあがるソファのフレームに厚手の布団が乗っかっているだけだと,その布団,ずり落ちてこないの?」

そう,その通り,ずり落ちてくるんです! フートンは日本の布団よりだいぶ固めで分厚いので,簡単にはずり落ちませんが,それでも何日も使っているとさすがにずり落ちてきます。だからたまにはフートンをひっぱりあげて整えてやる必要があります。

この欠点を解消するためなのか,最近は上記のような,「フレームに布団を乗せる式」のフートンはすっかり影をひそめてしまったようです。今回渡米して,上記のような「初期型フートン」がまったく見当たらないことに驚きました。実は今回の渡米ではベッドを買わず,フートン・ソファのフレームを抜いたフートン本体のみを買って,それを寝床にしようと思っていたのですが,売ってない!

かわりに,フレームにフートン・マットレスが固定されたフートンが主流になっていたのです。

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この形式ですと,マットレスがフレームに固定されていますから,「フートンがフレームからずれる」ことは起こりません。また,かつてのフートンはフレームから分離できることもあり,マットレス自体にカバーが着脱できたのですが,現在のフートン・ソファはフレームと一体になっているため,カバーを着脱できません。また,レザーソファを模したものが中心であるため,マットレスもかつての丸みをおびた布団的なものから,スプリングマットレスと同じようなスクエアな形状にかわりました。

こうして,オリジナルの布団とは似ても似つかない,西洋のソファに見た目がそっくりなフートン・ソファが出来上がったわけです。オリジナルのフートン・ソファは,フレームとマットレスがあり,そのマットレスが日本の布団をモデルにしていたためフートンと呼ばれていたわけですが,現在のフートン・ソファは布団マットレスを実質的に廃止し,「背もたれを倒す」というフレームのほうだけを継承していると言えます。布団とは似ても似つかないのに,いまだにFutonと呼ばれているのは,そういう経緯だと思われます。

とはいえ,厳密にいえば,現在のフートン・ソファのフートン・マットレスも,通常の西洋のソファよりもクッションがかなり硬いという点,また,マットレスとして見てもスプリングを用いていない点,この2点において,布団の機能を継承しているということは言えるかと思います。

でもまあ,現在のFutonを見て「布団だ」と思う日本人は一人もいないでしょうね。かつての,より布団に近かったFutonを知っている身としてはなんとなく感慨深いものがあります。輸入文化とは一人歩きするものですね。

ただ,この「イマドキのフートン」は昔のフートンに比べるとカッコいいことはカッコいいんですが,固くて寝心地は悪いです(;´Д`)