Apple Watch 2のランニング追跡アプリが微妙な件

前回は「まともなストップウォッチ・アプリがない」こと嘆きましたが,今回はランニング追跡アプリについてお話しします。GPS内蔵になったApple Watch Series 2のランニング・ウォッチとしての「現時点での」評価はいかに?

*ものすごく長文です。興味のない方,すみません。

比較するのは以下の4アプリ。

  • Runkeeper
  • Strava
  • ワークアウト
  • Nike+ Run Club

視認性と情報量

Apple Watchは色々な可能性を「秘めて」います(秘めないで実現してほしい……)が,ランニングで使う場合は,「必要十分な情報」がきちんと「見やすい」かどうかが重要。その「見たい情報」とは,経過時間,総距離はもちろんなんですが,ペースも重要なんですね。ペースというのは,1kmあたり何分で走っているかという目安です。

一言で「ペース」といっても,3種類ありまして。

1. 平均ペース
2. 現在のペース(current pace)
3. スプリット・ペース

1.の「平均ペース」はその名の通り,経過時間を総距離で割ったもので,重要な情報ながらも,経過時間と総距離が分かっていればだいたい自分で計算できるので,絶対なきゃいけないというほどでもありません。

2.の「現在のペース」は,計算方法が公開されないことが多いので今いち不明ですが,おそらく4〜5個のGPSポイントの平均ペースだと思われます(Runkeeperのウェブサイトにそんなこと書いていた)。4〜5個のGPSポイントがどれぐらいの距離か今いちわかりませんが,たぶん100mとか200mとか? はっきりいってそんな短いレンジの平均ペース教えてもらっても長距離走にはほとんど意味ないです。よっていらん情報。

逆に3.の「スプリットペース」は,通常1kインタバルごとの平均ペースで,これはたいへん有用です。Runkeeperのスマホ版はさらにインタバルを自由にカスタマイズできるのが強み。5kごとの平均ペースとかを設定することも可能。ただ残念ながらRunkeeperのアポーウォッチ版はデフォルトの1k以外のラップを指定すると落ちます。とほほ。

ということでσ(゚∀゚ )オレ的にレース中に知りたい情報は以下の通り。

1. 経過時間
2. 総距離
3. スプリット・ペース
次点:平均ペース
できれば:音声案内もほしい

ではこの観点から各アプリを見て見ませう。なお,どのアプリも,ラン終了後に総時間・総距離のほかに,マップ,スプリットペース,心拍数などをiPhoneに保存してくれるので,「記録」という観点からするとほとんど違いはないです。問題にしたいのは「ラン終了後に何を保存できるか」ではなく,「ラン中にどんな情報が,しかも見やすく」見えるかということです。

Runkeeper

まずはRunkeeper(v.7.10)。

3段表示で,

・上段:経過時間
・中段:総距離(タップで現在ペースへのスイッチ可能)
・下段:オプション情報

この下段はちょっと面白くて,タップするごとに,以下のような組み合わせで表示を切り替えられます。

1. 現在ペース&平均ペース
2. 現在ペース&心拍数
3. 心拍数グラフ&心拍数
4. 現在ペースグラフ&現在ペース

画像は4.の現在ペースグラフです(アポーウォッチ内で目標ペース設定をあらかじめする必要あり)。視覚的にペースが分かるのは意外にいい。ただ,「現在ペース」じゃなくて「スプリット・ペース」のグラフを表示してほしい。

Runkeeperではスワイプするとさらに,スプリット・ペースを表示できます(Splits view)。こういうふうにラン情報が2画面に渡るのはRkだけ。また,1つまえのスプリット・ペースと現行のスプリット・ペースを並べて示してくれて,これはけっこう(・∀・)イイ!!

問題は,文字が小さすぎて見にくいこと。メイン画面もそうですが,Runkeeperは情報量が多いいっぽう,表示にメリハリがなくて全体に見づらい。このSplits viewにいたっては「こんなにスペース空いてるのになんでこんなに文字がちんまいの??」と思ってしまいます。数字情報より「min/km」という文字がスペースを食っているのも納得できない。他のアプリに比べ,Rkは見づらいですね。せめて太字使ってくれ。

それから,注意点としてSplits viewはカスタムワークアウトを設定していると落ちます。

Strava

Stravaの表示はRkよりすっきりして見やすいです。

・上段:経過時間
・中段:スプリット・ペース
・下段:総距離&心拍数

Stravaはランナーにとって一番重要なスプリットペース(1kごとにリセット)がど真ん中の一番見やすい位置に鎮座しているのが良いです。全体の平均ペースは表示できませんが,スプリットの方が大切なので,この割り切りは(・∀・)イイ!!

しかし!

問題がありまして,少なくとも現バージョンのStravaのアポーウォッチ・アプリはiPhoneのStravaと連動していない。つまり,アポーウォッチのStravaを使うと,アポーウォッチ単独動作モードになります。これについては後述します。

それから,定期的な音声フィードバックやバイブでのフィードバックがない。だからリズムが取りにくいんですよ。特に,ふだんのランはもちろん道路に距離表示がないので,「今何キロ地点だろうか」ということを知るにはいちいちウォッチを見ないといけないんですね。StravaでもiPhoneアプリのほうなら音声案内があるので,メリハリが出るですが。

まあ,レースならばコース上に距離表示があるから問題ないのかもしれない。まだレースでは使ったことないんですが,インターフェース的には4アプリの中でいちばん見やすくて良いんで,こんどのレースで使ってみて,長丁場でも落ちないか試してみよう。

ワークアウト

さてその純正アプリ,ワークアウト。実は4アプリの中でもっともカスタム性が高く,表示する情報を選べます。

上記画像では,上から

・総距離
・現在のペース
・経過時間
・平均ペース

を示しています。他に心拍数やカロリー表示も可能です。Rkアプリと違って視認性もまあまあ良い。

が!

一番知りたい「スプリット・ペース」が表示できないんだよなあ,今のところ。上述したように「現在のペース」なんて情報,いらんのですよ。スプリットペースが知りたい。

実はワークアウトは,スプリット・ペースをまったく無視しているわけではなくて,1kmごとに,バイブとともに数秒間,1kmスプリットのペースを示してくれるんです。

ただ,この「数秒間」を逃すと,強制的に元のメイン画面に戻ってしまう。そしてあとからスプリット・ペースを見返すことはできない。走っていると(特に騒がしいレース中は)バイブのお知らせも気づかないことがあるし,これは困った感じです。

それから,このワークアウトは完全にアポーウォッチ単独動作アプリです。よって,アプリが落ちたらおしまいです。実際落ちることもあるので使用に不安が残ります。

Nike+ Run Club

さて,有名なNikeのアプリです。このアプリは視認性は抜群!

他のアプリ(特にRk)は見習ってほしいものです。基本的にこのアプリはカッコイイです。また,アポーウォッチから音声案内してくれる唯一のアプリです。(RkはiPhone連動モードのときのみ音声案内あり。)

情報は

・最上段:心拍数
・特大文字:総距離
・下段:ペース&経過時間

「ペース」はデフォルトでは非表示ですが,アポーウォッチ側アプリの設定で「All metrics」をオンにすると表示されます。

でもこの「ペース」は実際走って確認したところ「現在ペース」なんだよなあ……。「スプリットペース」じゃないんだよなあ……。ラン後はスプリットペースも保存されるのになぜラン中にスプリット確認できないんだ。

なお,このアプリはAW側でランをスタートさせると,iPhoneと連動しません。iPhone側でスタートしたときは連動します。

Apple Watch単独動作モードとiPhone連動モード

第一世代アポーウォッチにはGPSがついていなかったので,ランニングアプリも基本的にはiPhoneのGPS頼りでした(一部を除く)。しかし今やアポーウォッチもGPS機能がつきました。これでガーミンみたいなGPSウォッチと勝負できる土壌ができました。

そう,アポーウォッチ単独動作モードで安定していたら一番いい。iPhoneを携帯しなくていいから。しかもすべてのアプリはAW単独動作モードでも,ラン終了後にはiPhoneと自動的に同期して詳しい情報を保存してくれます。

ところが現実的には,スポーツに特化したGPSウォッチと違って,いろいろ多機能なアポーウォッチにおいては,ランニング記録アプリの安定性はまだまだ低い。今までσ(゚∀゚ )オレの経験では,Rk,ワークアウト,Nike+のいずれでもアプリが落ちるのを目撃したことがあります(Stravaはまだ使い込んでないので不明)。落ちたらそれで記録はおじゃんです。

しかし,上記アプリのうち,RkとNike+は「iPhone連動モード」を持っています。その場合,アポーウォッチ側が落ちてもiPhone側が落ちなければ(そして今のiPhoneランニング系アプリはまず落ちない),記録は続きます。ワークアウトとStravaはそのモードがないのでレースで使うのは不安です。

ただ,Nike+は,上述したように,アポーウォッチ側でランの記録をスタートさせるとiPhoneと連動しません。逆にいえばiPhoneと連動させたければiPhoneを取り出してiPhoneでスタートボタンを押さないといけない。(・A・)イクナイ!!

いっぽう,Rkは「アポーウォッチ単独動作モード(Watch Onlyモード)」と「iPhone連動モード(Watch+Phoneモード)」を選択でき,後者を選べば,「アポーウォッチからラン記録をスタートさせて,かつiPhone側と連動する」ことができます。そう考えるとRkが最強!

……となるはずですが。

残念ながら現バージョンのRkはここに爆弾をかかえています。もしかしたらσ(゚∀゚ )オレの環境下だけで起こるバグだという可能性も否定できませんが,現バージョンのRkは,アポーウォッチ側のRkが落ちてしまった場合,アポーウォッチ側Rkを立ち上げなおすと,iPhone側と再度連動して動き始めるように「見える」のですが,それは見かけだけで,その状態からアポーウォッチ側でランを終わらせてセーブすると,なんと,タイムが「アポーウォッチ側Rkを立ち上げなおしてからの時間」になってしまいます。つまり,実際は120分走っても,100分の時点でアポーウォッチ側Rkが落ちてしまって立ち上げ直した場合,記録は立ち上げ直してからの経過時間,つまり「20分」になってしまいます。なんじゃそら!

これの回避方法はありまして(←これを発見するまで時間かかった(;´Д`)),アポーウォッチ側でランを終了させなければいいんです。つまり,iPhoneを取り出して,iPhone側でランを終了させれば問題は生じません。しかし,レースのゴール時にiPhoneをいちいち取り出すのは面倒ですよね。その場合,いったんアポーウォッチ側で一時停止させて,ゴール後にアポーウォッチ側で再開し,同時にすばやくiPhone側でストップすれば,1秒くらいの誤差は出るものの,ちゃんとタイムが保存されます。

そこまでしてRkにこだわる必要あるか?!……という気もしますね。Rkは機能豊富なので,こーゆーめんどくさいことをしても使う価値はあるかもしれません。てか早くバグ直してくれ。

結論

まとめると,あくまでラン中の機能として:

スプリットペース表示 音声フィードバック 見やすさ AW単独動作 iPhone連動
Runkeeper ◯(連動モードのみ) ×
Strava  × ×
ワークアウト △(バイブ) ×
Nike+ Run Club ×

となりますが,とにかくスプリット・ペースがσ(゚∀゚ )オレ的には一番重要なので,RkかStravaの2択になります。Stravaは音声フィードバックがないのと,iPhone連動しないので不安なのがマイナスですが,画面の情報は非常に見やすくて使い易い。いっぽう,安定性は謎。

実はStravaはちょっと前のバージョンまでiPhone連動モードしかなく,単独動作モードはなかったのですが,最近のアップデートでは逆に,AW単独モードのみに変更されました。RkのiPhone連動モードの不安定さを見ると,もしかしたらStravaがAW単独モードの道を選んだのは安定性のためなのかなと。

こんどStravaをレースで使ってみて,どれくらい安定しているか試してみたいと思います。

いじょ。

【追記】続編⇒Stravaを少し見直した - ultravisitor