小学生のころ、「母さん、僕のあの帽子‥」の詩が流行りましたねえ。角川の戦略が勢いがあったころで、映画の中身よりも宣伝の方に印象が残る映画が多い。で、オレはこの映画は観てないので、観ることにしますた。キャストが豪華だし、ヒューマンドラマらしいし、観る価値あるだろうと。で、観たんですが‥。
な ん じ ゃ こ り ゃ
サスペンス・メロドラマで、一言でいえば、「予算がかかったシベ超」。豪華キャストなのに全員が大根に見えるのがすごい。アカデミー助演男優賞をとったことのあるジョージ・ケネディでさえ、この映画では大根。すごいね、監督の才能。
ストーリーは基本的に「砂の器」と同じ路線。しかし、個人的にはもう一つだと思った(http://d.hatena.ne.jp/ultravisitor/20041215#p3)「砂の器」も、この「人間の証明」に比べりゃ殿堂入りものの名作ですよ。役者、脚本、演出、撮影、すべての面で「砂の器」はホンモノの映画だった。「人間の証明」は晴郎レベル。ダサさもひどいもので、「古い映画だから古臭いのはしょうがない」じゃ許されんよ。
ツッコミどころ満載のこの映画、覚えている範囲でツッコミを。
- 映画始まってしばらくしてすぐに落ちが分かる‥のは「砂の器」も同じなんで許すけど、「砂の器」はまだプラスアルファの要素があった。この映画にはそれもない。まったく予想通りの落ち。
- キャラクターが漫画的で薄っぺらい。失笑もの。
- 端役までいちいちテレビで認知度の高いタレントを使うのがあざとくて鼻につく。
- 「衝撃の事実」(もちろん観てる方には全然衝撃じゃないんだけど)があきらかになるたびにいちいち音楽が「じゃーーん!!」と鳴るのはいかがなものか。
- 松田優作浮いている。ものすごく。
- 岡田茉莉子の大根ぶりがすごい。脚本と演出のせいだろう。かわいそうに。
- アメリカ進駐軍の非道な暴行のフラッシュバックシーンが晴郎クォリティに毛の生えたもので寒い。しかも同じシーンが何回も使われる。
- 基本的にアメリカロケがぎこちない。
- 松田優作の英語がヘタなのは良いとして、現地に長く住んでいる設定の日本人フォトグラファーの英語がヘタなのはいかがなものか。
- 警察の推理に憶測が多すぎ。しかもすぐに断定する。
- アメリカに「戸籍」などという制度はない。出生証明書と言え。
- ファッションショーの時間が無駄に長い。
- 「当時店で働いていた人の名前思いだせませんかね? 一人でいいんです」「一人、XXという人がいたね」それがドンピシャ。そんな都合良く行くか!
- 証拠固めもしてないのに、刑事が駐車場で車に向かう被疑者に対して憶測に基く推理をべらべら話してあげくのはてに「あんたが殺したんだ!」って言うのはいかがなものか。そんなことして捜査に何の進展があるんだ。無能の刑事じゃん。
- 松田優作がアメリカで黒人の一団を一人でボコボコにするシーンがあるが、その意味・意図が分からない。その他にも、黒人をスラムのステレオタイプで一貫して描いていて観ていて不愉快。
- 岩城滉一がアメリカのホテルのロビーで銃をとりだすのだが、そのとき回りが平静なのはどうしたわけか。
- 岩城滉一の最期が噴飯もの。晴郎クォリティ。
- 岡田茉莉子の最後のとんでもないスピーチで会場がざわめかないのはなぜ?
- 「逮捕しましょうか?」「(首を横に振る鶴田浩二)」‥な、なんで???
- ラストシーンも自己陶酔的、自己満足的で観ていて辛い。
というわけで、日本映画の底辺を観る思いで、暗澹たる気持ちになりました。口なおしに今から同じ角川映画の「犬神家の一族」を観ることにします。