発表から3日経ち、ものすごい量の関連情報を読み続けてきたのでさすがにちょっと冷静になってきました。この調子だと衝動買いしなくてすみそうです。…実物みたらその限りじゃありませんが。前から言っているように、オレは通勤時間が片道徒歩15分強なんで、片道3、4曲しか聴けないのね。だから今持ってるshuffleを買い換える必要は皆無なわけで…って、shuffle買うときも似たようなこと言ってたな。
しかし iPod nanoって、名前の響きが日本語的に良いよね…女の子言葉っぽくて。実際、新mac板やポータブルAV板では「iPodなの」とか「iPodなのなの〜」といったスレがあまた建ってます。
さて、いろんなソースで観た人も多いと思われます、ジョブズによるiPod nanoの発表映像ですが、気になるのが、多くのネット上のメディアで、ジョブズが「今回はかなり大胆な発表をしたいと思う」と言ってnanoを発表したという感じで、つまり、「大胆 = nano」という感じで報道されていたこと。それはちょっとニュアンスが違うのでは…。
ジョブズはその前にiPod miniの話をしていたんですよね。miniがいかに売れているか、そして同業他社がいかにminiをターゲットしているか。miniがいかに売れているかというのは、例えば、これは最近の日本のデータですが、以下の↓ランキングを観てもわかります。
http://bcnranking.jp/flash/09-00003932.html
この携帯オーディオランキングでは、1〜4位をApple iPodが独占してますが、堂々1位がiPod mini 4GB。7位につけているiPod mini 6GBと合わせると、実に(このデータ上では)携帯オーディオの17%を超すシェアです。iPodのシェアが40%超ということですから、iPodの中では4割強をminiが占めていることになります。
で、こういった「miniの強さ」を前提にしたうえでジョブズは「大胆な発表をする」と言ったんです。何が大胆なのか? 続けてジョブズは言います。「We're replacing it」つまり、mini をやめて別の機種に変えてしまうと言ったんです。その後にnanoを披露するんですが、「大胆」なのはnanoそのものではなく(nanoは大胆というより革命的と言う感じ?)、売行き絶好調の製品であるminiを製造中止にすることなのです。
オレ自身は、ジョブズの発表のここの部分を観ていて、ほんとスゲーと思いましたよ。だってさ、同業他社がねらいうちにしているminiを、こともあろうにApple自身が、その絶頂期に葬り去ってしまうわけですから。確かにnanoとminiは性能的に似ている。だから、論理的にはminiをやめてしまうのは間違ってない。でもねえ、売れまくっている商品をひっこめるというのはすごいリスクが高いし、普通なら、miniをやめないで、nanoを製品ラインナップに追加するにとどめるでしょう。
しかし、そうせずに、ばっさりと人気商品を切ってしまうのがジョブズのクレイジーなところであり、同時に経営者として迫力のあるところだと思いますね。ジョブズはよっぽどこのiPod nanoという製品に自信をもっていたんだろうなと思う。だってさ、主力製品を葬っておいて新製品がコケたらほんと悲惨ですぜ。それを恐れないところに今のAppleの勢いを感じる。それに加え、この決断には「製品ラインナップはあくまでシンプルに」という、ジョブズ復帰以来のAppleの哲学へのこだわりを痛烈に感じる。
Apple好きは知っているかと思いますが、ジョブズは赤字経営にあえいでいたAppleに復帰したとき、「製品ラインナップが複雑すぎる」として、徹底的に製品部門をリストラしました。結果、ジョブズ復帰後のMacは「コンシューマー用デスクトップ=iMac」「コンシューマー用ノート=iBook」「プロ用デスクトップ=PowerMac」「プロ用ノート=PowerBook」という、わずか4つの、最小限のラインに削られました。これはジョブズの「コンセプトは明確に、しかも消費者がぱっと見て分かる形で」という強い信念の表出だったわけです。
今回の「大胆な発表」にもまったく同じ精神が貫かれていて、その頑固さには驚くばかりです。これだけマーケットが大きくなったiPodなのに、現段階で「iPod」「iPod nano」「iPod shuffle」の3機種しかないんですよ!(もちろん3種の中に若干のバリエーションはありますが) 「こんなシンプルすぎるラインナップだったらmini残してもいいじゃん…」と言う気もしますが、ジョブズにしてみればnanoとminiが併存するんじゃ「コンセプトが近すぎるから駄目だ」ということになるんでしょうね。とまれ、この潔さは見習うべきところがあるかもしれません。