TOEFL iBTを受けてみた

実は奈良マラソンの前日,TOEFLのiBT受けてみました,大枚はたいて。なんで受けたのか?…と言いますと,最近うちの学科の学生に留学希望者が急増していまして(2年生で3人に一人が半年以上の留学に行く状態),そのうちのほとんどの学生は留学申請資格としてTOEFL iBTを受けているわけです。

このTOEFL iBT (Internet-Based Test)というのは過酷な試験として知られていまして,かつてのマークシートのTOEFL PBT (Paper-Based Test)ならリーディングとリスニングしかなかったところを,iBTはスピーキングとライティングがあるんですね。しかも,スピーキングはたとえば,「短文を読んで,それについての会話を聞いて,それを口頭で要約し,かつ自分の意見も加える」という全スキルを合わせたような問題もあったり。

で,ぼくは年代的にPBTしか受けたことがないので,iBTとはどういうものか,今後の学生指導のためにも受けてみた方がいいんじゃないかと思って,気まぐれで申し込んでみました。

その顛末を記録しておきます。スコアも公開するぜよ。

朝〜試験前

試験は朝10時スタートで,「9時半までに受付しなければ受験できないことがある」と注意書きがあります。急いで車を走らせて,会場近くの一番安いコインパーキングに車を停めて,会場にかけつけます。ちなみに受験の冊子には,「試験会場内には,腕時計も携帯もかばんも何も持ち込んじゃいけない」とか,「会場に安全な荷物預けサービスがあるとは限らない」とか,いちいち脅すようなことが書いてあるので,(1) 申し込みの確認メールのプリントアウトしたものと (2) パスポートだけ持って,あとは車にすべての荷物をおいて,ほぼ手ぶらで会場入りしました。9:20過ぎかな。

しかし,実際のところ,ロッカーは完備してあったので荷物持ってきても全然OKでしたね。また,保証はできませんが,9:30過ぎたら受け付けてくれないというわけでもなさそうでした。ただ,IDチェックはけっこう厳しそうですので,そのあたりは注意が必要です。TOEFLは,受験申し込みはローマ字の氏名を申告するので,身分証明書もローマ字記載のものじゃないといけません。ということは,日本人の場合,パスポートが一番無難ということになります。

受付に行くと,「試験内容を口外しない」という誓約書を書かされ,それを提出して受付終了です。

試験開始

さて,待合室でちょっと待っているとすぐに名前を呼ばれ,試験会場に案内されました。9時45分ごろ? どうやら受付した順に試験を受けられるようです。早く来た方がいいかも。

試験会場はふつうのパーティション付きのコンピュータルームみたいなところで,試験場の手前は,ガラス越しに試験官の待機場所になっています。ここでも入念なIDチェックと写真撮影のあと,試験室内のパーティションに通され,簡単な説明を受けた後,一人で試験を進めることになります。

最初にマイク付きヘッドセットを付けてスピーキング用のマイクチェックがありますが,初めに受けるのはマイクもヘッドホンも使わないリーディング・セクションです(なんじゃそら)。

なんせ各自バラバラのタイミングで試験をやってますので,早い人はスピーキングを始めています。それが聞こえてくるとかなり気が散るので,そのために,防音イヤーマフもおいてあります。ただ,防音イヤーマフというのは,ふつう工場や飛行場で使われるもので,騒音をシャットアウトしつつも人の声は聞こえるように設計されているので(安全のため),こういう「人の声を遮りたい」ときには意外に無力です。それでもないよりマシ!

ということでリーディングスタート。「XXXの出来方」という,しょっぱなから,ちょう興味ないトピック。全然興味ない内容なので,次から次へと出てくる専門用語がまったく頭に入ってこない(;´Д`)。

TOEFLのリーディングはほぼすべてがリベラルアーツ的内容で,自然科学,生物から文学,歴史,芸術までいろいろあるんですが,おもしろいものはすごく面白いんです。でもかならず一つはまったく興味惹かれないトピックが入っていて,それは読んでも読んでも頭を単語が素通りしていく。

よりによってそれが一問目とは…。

ペースが掴めないあせりを少し感じつつ,「これさえ乗り切れば,他は興味もてるトピックがたくさん来るに違いない,この一問目は少々時間使ってもいいだろう」ということで,ゆっくり取り組みました。ちなみに同じ大問の中の小問なら戻って見直すことができますが,次の大問に移ったら前の大問に戻ることはできませんので,あせって次に進むと取り返しがつきません。落ち着いてスロースタート。

ということで,一問目のみゆっくり目にやって,あとは予想通り頭に入ってくるトピックだったので快調に終えることができました。

大問ごとに見直しもやったので,確実に点が取れたと手応えあり。

次にリスニング。いちおう前日の夜に練習テストをちゃちゃっとやっていたので,問題のパターンはだいたい分かっていて,比較的冷静にできた。しかし,「この選択肢とこの選択肢,どっちもOKやん!」というのがときどきあって,けっこう悩みましたね。

大体は出来たという手応えはありましたが,リーディングよりは取りこぼしが多そう。

10分休憩をはさんで,次はスピーキング。これが鬼門。

これも前日の夜にプラクティス・テストやってみて,どんな形式の問題が出るかはわかっていたのですが,プラクティス・テストはいかんせん採点してくれる人もいないし,夜中の居間でヘッドホンつけてブツブツと英語をしゃべるのも恥ずかしいので,あんまちゃんと練習しなかったんですね。まあ,こちとらアメリカに8年半も暮らしていたし,今も週2回留学生相手に英語で専門の授業している身だから,練習しなくても本番いけるやろ,と思っていたんですが。

やってみるとこれがムズい。お題を与えられて「はい,15秒で考えまとめて,45秒でしゃべってね」と言われても,なかなかスムースにできないです。てか,日本語でも,留守電30秒で入れろと言われてもあせってしどろもどろになったりするでしょ? あんな感じですよ!

  • つっかえる。
  • ドモる。
  • 最初ゆっくりしゃべってたら時間なくなって最後早口になる

しかし,他の受験者がやっているのを盗み聞きすると,けっこう皆さん,たとえジャパニーズイングリッシュの発音でも,一定の速度でよどみなく話しています。すごいなー。訓練されているなー。感心しました。

ということで,スピーキングはけっこう悔いの残る出来。

最後にライティング。ライティングは2問だけ。これは楽勝。なんせ書くのは商売やから。語彙,表現,論の展開,すべて隙なく書けたという自負が。ライティングはぜったい満点。そう確信。見直しもして,時間早めに鼻歌まじりに退出しました。

結果

スコアは2週間でウェブで見られるという話でしたが,それより早くメールで「結果,もう見られるよ」と案内。

ちなみに,TOEFL iBTのスコアは,リーディング30点,リスニング30点,スピーキング30点,ライティング30点の120点満点。

さて,自分のスコアは…106。

うーーーーーーーーーーーーーん,ぼくはガサツな性格だし気合いも入ってないから,満点はハナからねらってないけど,106か〜…。110は欲しかったなああああああああああ。

内訳は,まずリーディング29/30。これはまあ満足。

リスニング27/30。これもこんなもんかな。

スピーキング23/30。低すぎ!!!

ライティング27/30。工工エエエエ(´Д`)エエエエ工工 傲慢なこと言うけど,これでもアイビーリーグでPh. D.取ったんですけど〜国際ジャーナルに英語論文掲載したことあるんですけど〜これまで書いた英語論文の紙数はのべ数百枚になるんですけど〜オレの何が足りないんですかあ〜???? これはムリ。オレにはあれ以上の解答は書けない。「3点マイナスです」と言われれば,「ハイすみません,一生その3点には手が届きません」と答えるしかありません。

ちなみにTOEFL公式の換算表によれば,iBTの106点はPBTの623-627点相当らしい…って,それオレの15年前の渡米前のPBTスコアと変わらんやん! その後8年半アメリカで暮らして,アメリカの学部生教えたり,博士号取ったり,そういう経験してスコア同じなん? まあ,PBTはスピーキングないから,スピーキングで今回点を大きく落としたということなんだろうなあ。

正直,納得いかない気持ちがあるので,リベンジしたいと思う反面,リベンジしたところで特に何か良いことあるわけでもないし,金もったいないので,この106という数字を背負って生きていくことにします。チーン。

試験の難易度は…

自分のことはともかく,試験の難易度はやはり,日本の一般の大学生にはかなりキツめだろうなと思いました。リーディングに限っていえば,昔のTOEFL PBTと大差ないので,GREのVerbalなんかに比べれば当然やさしいですが,それでも内容はすべてアカデミックなので,なかなか難しいでしょう。あと,高校〜大学受験レベルの幅広い知識を持っていると有利だろうなと思いました。大学の教養の授業に出てきそうな内容を予め知っていれば相当有利です。

リスニングは,「アナウンサーがゆっくり明瞭に話すような英語」ではなく,「言いよどみも含めた自然な速さの英語」なので,日本人にとっては相当「早口」に聞こえると思います。それでも実生活の英語よりはずっと明瞭ですが,それでも,センター試験のリスニングとは比べ物にならない。かなり勉強が必要ですね。

スピーキングももちろん試練でしょう。(てか,リスニングでは言いよどみあるのが「ナチュラルな英語」だけど,スピーキングでは言いよどんだら減点なのが軽く納得いかねえ…いや,そりゃ分かるけど。)

全体に使われる単語レベルもアメリカの「大学レベル」のものが,注釈もなしにどんどん出てくるので,ぼくもやりながら「こんな単語うちの学生は知らんやろうなあ」と思いながら問題やっていました。もっと授業で負荷かけてやったほうがいいのかも?と思ったり。

結論としては,中堅大学の学部生がまともな点を取るには相当な努力が必要ですね。最近授業で積極的な学生が増えている気がしますが,TOEFL受験のプレッシャーもあるのかもしれません。引っ込み思案,受け身では絶対乗り越えられない試験です。学生諸君には頑張ってほしいところです。